Credit : Palau Visitors Authority

「南洋の楽園」パラオが世界に発信、環境保護に向けた革新的な試み『パラオ・プレッジ』とは

「南洋の楽園」を乱す者、入るべからず。

2017年12月7日から実施されている『パラオ・プレッジ』は、パラオ共和国に入国するすべての観光客から署名を要求し、自然保護の誓約をとりつける世界初の試みだ。

Credit: Palau Visitors Authority

 

まずはパラオ行きの飛行機内で案内ビデオを視聴し、入国時にはパスポートに『パラオ・プレッジ』が書かれた入国スタンプを押される。署名しないと入国できず、違反すると100万ドル(約1億1千万円相当)を上限とする罰金を取られる仕組みになっている(が、いまだ罰金を科されたという報告はない)。2018年8月8日現在ですでに103,000名以上の署名を集めている。

英語、中国語、韓国語、日本語をはじめとした多言語の入国スタンプが用意されており、実際の文言はこのとおりだ。

 

パラオの皆さん、

私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません。

(駐日パラオ共和国大使館ウェブサイトより)

 

 

『パラオ・プレッジ』は観光客のマナー向上に役立つと同時に、地元民の教育にも一役買っているそうだ。実際『プレッジ』に一番最初に署名したのはパラオ共和国の大統領、トミー・レメンゲサウ氏自身だった。

誓約の内容はパラオの子どもたちに意見を出してもらったうえで、パラオの未来の子どもたちのために考案されたそうで、具体的にはこのようになっている。

  • サンゴ、貝類、魚類、カメ、サメを含む海洋生物を捕らない。
  • 魚やサメにエサを与えない、触らない。
  • サンゴを傷つけない。
  • 花や果実を採らない。
  • ゴミを捨てない。
  • 禁煙エリアではタバコを吸わない。またタバコの吸い殻をポイ捨てしない。
  • 地元産業やビジネスを支援する。
  • 地元の風習を尊重し、従う。
  • 地元の人々や文化についてもっとよく知ってもらう。

 

Credit: Palau Visitors Authority

 

パラオ共和国にとって、マリンブルーの海に囲まれた自然環境は最大の観光資源だ。国の積極的な誘致もあり、2010年以降は観光客が70%も激増し年間約15万人にのぼる外国人観光客を迎え入れるようになった。

ところが、観光が盛んになるとともに環境の悪化も顕著になった。海岸に無造作に捨てられたゴミ、破壊されたサンゴ礁。一部の観光客のマナーが地元住民の怒りを買い、国レベルの対策が求められた。

 

(イメージ画像)Credit: adege / Pixabay

 

そこで、2015年にはまず約50万平方キロメートルの海域をサメ保護区や海洋保護区に指定し、商業的な漁業や採油活動を一切禁じた。さらに2017年から『パラオ・プレッジ』を導入。環境保護のために入国審査法を書きかえた世界初の試みで、サステイナブルツーリズム(持続可能な観光)に向けての取り組みとして世界中の注目を浴びている。

問題はいかに取り締まるかだ。The New York Times Magazineによれば、パラオ共和国は250もの島から成り、およそ60万平方キロメートルもの排他的経済水域を有するにもかかわらず、わずか18名の海洋パトロール隊員しかいない。とてもではないが観光客の行動を隅々まで監視できるような体制ではない。

入国時に『パラオ・プレッジ』に誓約したら、あとは個々の観光客の良心に頼るしかないのが現状のようだ。どのぐらいの効果が出るのかは未知数だが、『プレッジ』をきっかけに環境保護への意識が高まり、自然資源を大切にする行動が増えると期待されている。同じような悩みを抱える国や地域が、観光資源を守るために似たようなプレッジを導入する可能性にも期待したい。

 

山田ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材とインタビューにも挑戦している。大学時代に断崖絶壁に咲く青いケシの花に憧れてネパールへ留学するも、ケシを見つけられないどころかトレッキング中トラブルばかりに見舞われて結局植物学から文化人類学へ転向。人間と自然の相互作用が研究テーマ。https://chitrayamada.com/

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