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ロボットと共存する未来へ:将来のロボットとアイコンタクトをとれるか?

エンターテインメント作品に登場するロボットや玩具としてのロボットには、目や顔を持つものが多い。しかし、物語を語る上でのキャラクターとしてのロボットとは異なり、現実のロボットには人がアイコンタクトを取るための目を持たないものも多い。そのようなロボットに人は慣れ親しむことができるだろうか?

 

顔や目を持ったロボット

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『スター・ウォーズ』シリーズに出てくる人型の通訳儀礼用ロボットのC-3POは人の顔のような頭部を持ち、人の目に該当する部分に視覚センサーがあることが『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』作中からわかる。1986年の映画『ショート・サーキット』では戦争用にデザインされたはずのロボットが、視覚センサーである目と「まぶた」にあたる部品により豊かな表情を見せる。2008年のCG映画『ウォーリー』もゴミ処理ロボットであるにも関わらず同様に目や頭の仕草で様々な表情を作っている。現実のロボットでは「目」に表情こそ見て取れないものの、Pepper君もこれらに共通する、3Dセンサーとなっている「両目」を持つものだ。

これら例に挙げた「目」すなわち視覚センサーは設定上機能を伴うものだが、単純にコミュニケーションのためだけに機能を伴わない目を持つロボットもある。例えば2010年のゲーム『フォールアウト: ニューベガス』では前面にブラウン管ディスプレイのようなものを備え、そこに人の顔がイラストレーションで描かれ、見る者がロボットの反応を理解する助けとなっている。それらは「見せかけだけの目」と言うことができるだろう。

 

見せかけだけの目

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このようなエンターテインメント作品の影響もあってか、いわゆる玩具としてのロボットにも同様に、ユーザーとのコミュニケーションのため(もしくはユーザーにコミュニケーションを取っているという幻想を抱かせる助けとするため)に、機能的には目としての意味をなさない「目」を持つものがある。

1990年代末に流行ったロボットおもちゃ「ファービー」には二つの大きな目があるが、実際の光センサーはファービーの目に見える部分ではなく、眉間に存在する。そして「目」のように見える部分はファービーの表す感情をユーザーに伝えるために存在する、情報を出力する装置でしかない。2016年に登場したAnki社の小さなロボットおもちゃ、「コズモ」も先の『フォールアウト~』のロボットのようにディスプレイにロボットの「目」が表示されることによりロボットの「表情」を表す役割をしており、実際のカメラモジュールはディスプレイ下についている。昨年新たに登場したソニーのロボット犬「aibo」も様々な情報を「目」により伝えてくれるが、実はカメラは目ではなく鼻先にある。

 

ロボットに目は必要か

コミュニケーションインターフェイスの意味では、顔や目といった部品は人にとって重要な意味合いを持つ。だが人とのコミュニケーションよりも機能を優先したロボットには人のような目や頭は必要ないし、人のような形をする必要も無い。工場の組み立てロボットにしろ、カリフラワー収穫ロボットにせよ、院内滅菌ロボにせよ、掃除ロボットのルンバにせよ、人と接することが主な機能ではなく、特化した仕事内容を持ったロボットは現にそのようになっている。

MITのロボット「Cheetah」(チーター)も、体こそ四足動物に見えるものの顔らしいものはなく、視覚情報を使うことなく階段を上ることができる。Digital Trendsに語るMITのロボットデザイナー、サンバエ・キム(Sangbae Kim)は、視覚情報は機械にとってデータが多すぎてノイジーだと語っている。

人からの指示を受けるために何らかのコミュニケーションを取る必要があるロボットであっても、コミュニケーションを取ることが最重要目的ではない場合、わざわざ人とのコミュニケーションを円滑にするためだけに視覚センサーのような複雑な処理を要する部品をつけることは無駄であろう。だが自律的に機能するにも関わらずコミュニケーションを取るために見つめる目がないというのは、相手がこちらの話を聞いているのかわからずなんだか取り付く島もない感じがしないだろうか。

エンターテインメント作品の中に登場するロボットの中でも、2014年の『インターステラー』に登場するTARSやCASEは目らしい部品を持っていない。周りの環境を把握するための視覚センサーは付いているのだろうが、顔に見える部位はもなければ、人の形もしていない。Interstellar Wikiによれば元々アメリカ海兵隊で使われていたという設定のモノリス状のこのロボットたちは、四角い体に備わった軸を使い様々に形を変化させて人を救助したり宇宙船を操縦したりしている。しかし滑らかな音声でしゃべる人間らしい会話内容と、それにそぐわない姿形は見る者にどこかしら違和感や不安感を感じさせる(これはストーリーテリングでのこれらの効果を狙った意図的なデザインであるかもしれないが)。

このような目を持たないロボットたちは、ある意味では道具の延長上、またある意味では現代のスマートスピーカーもこの延長線上にあると言えるかもしれず、この点を考えて見るのも面白いだろう。(スマートスピーカーに関しては、スマートフォンの持つデジタルアシスタント機能にも似ており、人がデバイスそのものを電話機に近い存在として認識している可能性もあるかもしれない。これに関してはGoogleアシスタントやAppleのSiriとは違い、ドコモのデジタルアシスタント「ひつじのしつじくん」などは顔を持ったキャラクターとして描写されていたのも興味深い点だ。)

 

 

アイコンタクトの重要性

 

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人間にとってアイコンタクトの重要性はとても大きなものだ。生まれて2日目の新生児も自らを見つめる顔を好むという研究があるし、生後7ヶ月では僅か50ミリ秒の間に自らを見つめる瞳と、目を逸らしたものとを識別するという研究などもある(Farroni, et al. 2002)(Jessen, Grossmann, 2014)。アイコンタクトは相手の表情を読み取るのに重要なだけではなく、自己意識にも重要な役割を果たす(Baltazar et al. 2014)。その上、目を見て話されたことはより信用できるとされる(Kreysa et al. 2016)。

しかしその一方で、現代スマートフォンやタブレットなどの技術の発展に伴い、人と面と向かってコミュニケーションを取る機会が減ってきているのも事実だ。米イーロン大学のエミリー・ドラゴ(Emily Drago)による2015年の研究では、技術が人との直接のコミュニケーションに悪影響をもたらすと考える回答が92%あった。また、人と実際に合っている最中にスマートフォンなどを用いることも問題となっており、同研究では、友達や家族が自分と過ごすときにそのようなテクノロジーを用いることを不愉快に感じるという回答が74%あった。

将来我々の生活を手伝ってくれるであろうロボットにはアイコンタクトを取るための目がついているだろうか?それとも、我々の後の世代には、ロボットの顔や目を見つめずとも違和感を感じることなくコミュニケーションを取ることができるだろうか?

 

安藤 悠

*Discovery認定コントリビューター

フィンランド在住のライター。執筆分野は、エンタメ、ガジェット、サイエンスから、社会福祉やアートに文化、更にはオカルト系まで幅広い。ライター業の傍らアート活動も行っているほか、フィンランドや日本で両国の文化を紹介する講演を行うことも。
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