液体の水が火星に存在する証拠をついに発見か…これまでのニュースをおさらい

火星の地底には液体の水をたたえた湖が存在している根拠をイタリア宇宙機関(ISA)が発見し、学術誌『Science』に6月25日付で発表した。

火星にはかつて水が流れていた可能性が長年憶測されてはいたものの、具体的な根拠は今まで見つかっていなかった。今回の発見により、火星に液体の水が永続的に存在している可能性が非常に高くなった。

地球でも同様の地底湖が南極大陸の下に400以上存在している。そしてその中の少なくともいくつかには生命の存在が確認されている。同じような環境下において、火星でも生物が生存しているのではないかとの期待が大いに高まっている。

 

氷点下70度の湖

まずは研究発表のおさらいを。

火星を周回する無人火星探査機『マーズエクスプレス』(トップ画像)に搭載された特殊なレーダー『MARSIS』は、地表を貫通して火星の表面下の構造を探ることができる。ISAの研究者たちはこのレーダーを使って2012年から2015年の間、重点的に火星の南極点付近のデータを集めた。そしてある奇妙なパターンに気がついたという。

Credit: ESA/NASA/JPL/ASI/Univ. Rome; R. Orosei et al 2018

南極の分厚い氷の下に、レーダーを反射してやけに明るく映る層が見つかった。通常では氷や塵、岩盤よりも液体の水明が明るく映るため、地底湖の存在が浮上した。ところが、同じエリアのデータでも明るい層が映し出される場合とそうでない場合があったため、はじめはデータの信頼性が疑われたそうだ。

調べていくうちに、明るさを示すデータの数値があまりにも標準値から外れていた場合、MARSISのプログラムが勝手に数値を除外してデータを補修していたことがわかった。その後プログラムのアップグレードを行い未加工データを集めた結果、どの周回でも同じ地点が明るく映し出されるようになったという。

Credit: R. Orosei et al. via Science

 

MARSISが映し出した「明るい層」は南極の氷冠の1.5キロメートル下に存在し、幅は約20キロメートルの丸みを帯びた三角形だ。氷冠の真下の温度が-68.15℃と推定されているのにも関わらず液体のままなのは、火星の岩盤に含まれているマグネシウム、カルシウムとナトリウム過塩素酸塩が大量に溶けだして氷点を下げているからだと考えられるそうだ。

 

「火星に水があった!」とは言い切れない理由

このような革新的な発見を前にしても、イタリアの研究者たちは冷静だった。「明るい層」は水以外のなにかによるものではないかとあらゆる視点から計算と考察を重ね、それでもやはり液体の水だというのが一番妥当な解釈であると結論づけている。

研究者たちがここまで慎重なのにはワケがある。この研究の示唆しているとおり火星の地下に液体の湖が広がっているのだとしたら、火星に生命が存在する可能性が非常に高くなってくるからだ。

技術と科学的知見の発展に発展伴い、いまや火星は人類の手の届くデスティネーションになりつつある。火星に向けての有人飛行をNASAが準備しつつある今、そしてスペースXのイーロン・マスク氏が積極的に火星コロニーの構想を練っている今、火星は地球人にとっての第二の故郷となる可能性を一番秘めている太陽系惑星だ。

そんな火星に生命が存在していると証明されたなら、今後の宇宙開発を大きく左右するだろう。

 

今後の課題と展望

今回の研究結果を踏まえ、世界中の宇宙科学者たちがこぞって第2、第3の「明るい層」の発見に乗り出している。湖とおぼしき「明るい層」がひとつ発見されたことは非常に有意義だが、同じような地形が複数発見されない限りはただの例外かもしれないからだ。

「明るい層」はほかにもあるのか。さらに、「明るい層」の存在をどのように証明し、どのようにその水を分析して生命の痕跡を調べられるだろうか?疑問は次から次へと湧いてくるが、更なる調査はなかなか越えにくいハードルでもあるそうだ。

まず『マーズエクスプレス』の軌道が南極を通ることが少ないため、データを集めるのに膨大な時間を要する。さらに、火星の南極点は北極点と比べてゴツゴツとした岩山が広がっていて、大気も極端に薄いために空気抵抗が少ないため、新たな探査機を送る際に非常に難易度の高いランディングを要するそうだ。この理由により、いままでの探査機のほとんどは緯度の高い場所での着地に成功している。

Credit: NASA/JPL-Caltech via The Conversation

 

お隣りの惑星とはいいつつ、火星は地球から7830万キロも離れている。直接今から赴いて水質調査をできないからこそ、今後地底湖の存在を確認するためには革新的なアイディアが必要になってくる。科学者たちの知恵比べの行方が気になるところだ。