未だ原因が特定できない南極上空の謎の大気波…気候モデル改善の鍵にも

研究者たちが南極上空の謎の大気波を調べ、その原因を探っている。南極上空の大気波の理解はより正確な気候モデルをつくるにあたっても重要なものだ。

 

謎の大気波

地球の重力と回転で形作られた空気の振動による「大気波」は、快晴な空での乱気流が起こる理由であるともされる。これは、簡単に言えば水面に起こる波と同じように、大気に発生する巨大な波だ。地球の大気の様々なところで発生する大気波だが、そのほとんどは数時間のうちに消えてしまう。

しかし7年前、南極の空に奇妙な現象が観測された。これは大気波ではあるものの他では見られないほどの長時間波打っており、以来研究者たちが観察する度にそこに存在するというものだった。これは地表から50~80kmの中間層に現れ、一度に最高10時間持続する。果たしてこの波の原因となるのがなんであるかはこれまで判らなかったが、Journal of Geophysical Research: Atmospheresに7月25日に発表された最新の研究では、この原因となる可能性が二つ提示されている。

 

大気波の原因は…

Credit: Jeff Schmaltz MODIS Rapid Response Team, NASA-GSFC

研究ではレーザーによるリモートセンシング技術「LIDAR」による観察やモデリングにより行われた。LIDARにより大気の様々な部分の温度と密度を計測することで、大気波の影響を調べている他、研究者たちは大気波の運動量やエネルギーを計測した。

一つの可能性は、3000kmにまで及ぶこの大気波は、実際には中間圏よりも下の成層圏で生じたより小さい波が原因となって起こるものではないかというもの。この説では、南極大陸の山を駆け下りる風が下層の大気波の原因となり、大気波は次第に大きくなり、大気の上へと登るとしている。そして波が成層圏と中間圏との境界に来たときに、波は砕ける。これは海の波が波打ち際で砕けるのと同じようなもので、これにより更に大きな波ができるのではないか、という説なのだ。

もう一つの可能性は、南極の冬空を時計回りに回る低気圧域「極渦」が関連するもので、素早く回転する風が下層の大気波を変化させて上昇するか、極渦そのものが波を生み出すのではないかという説だ。

実は今回の研究で提示された二つ以外にも2016年の研究では南極の海の波がロス棚氷を振動させることにより生じる可能性を指摘しており、今回の研究者たちもこれが原因であるという可能性も捨てきれないとしている(Godin, Zabotin. Journal of Geophysical Research: Space Physics)。

 

大気波と気候モデル

Credit: NOAA

LiveScienceに語る研究主筆、シンジャオ・チュウ(Xinzhao Chu)によれば、大気波は世界の大気循環に影響を与える。しかしその一方で、大半の気候モデルでは大気波がきちんと考慮されていないため、気候モデルでのシミュレーションでは南極上空の成層圏と中間圏の境界、成層圏界面の温度が観察温度よりも大幅に低くなってしまうのだ。これは特に人間がオゾンに与える影響を理解するには重要なことだとチュウは語っている。

まだ今回の研究でも説が出ているのみで謎の大気波の原因が特定されたわけではないが、このような研究でを通じ気波をより深く理解することで、より正確な気候モデリングができるようになるのだ。