これも棺を開けた呪い?ミイラが浸かった下水を飲むための署名スタート…専門家は注意喚起

エジプトで巨大な黒い石棺が見つかった。開けたら呪いが解き放たれるとされた石棺、蓋を開ければ3人分の人骨と外から入り込んだ下水…「ミイラ水」で満たされていた。ネットではこのミイラ水を飲もうという署名が集まるが、専門家は飲まない方がいいと勧めている。

 

巨大な黒い石棺

約2000年前の花崗岩でできた巨大な黒い石棺が、7月19日に開けられた。この石棺は長さ2.7m、幅1.5m、高さ1.8mもあり、エジプトのアレキサンドリアで今月初め発見されたもの。この地域をアレクサンドロス3世が征服した紀元前332年以降のものであるとされる。近くには男性の頭の石膏像があるほかは銘なども見つかっていない。

そんなこともあって、これはアレクサンドロス3世の棺であり、開ければ呪いが解き放たれるというウワサも流れていた。エジプト考古省によれば、中に入っていたのは軍隊将校と思われる3人分の遺骨だった。このうち一人は頭蓋骨に矢による傷が見受けられた。一体これが誰のためのどのような目的の棺かは今のところまだ詳しくは判らない。

しかし石棺に入っていたのはそれだけではなかった。石棺は下水溝から漏れ出た下水で満たされていたのだ。

 

石棺内のミイラ水

Credit: Ministry of Antiquities وزارة الآثار via Facebook

それだけならば何も問題は無いが、なぜかこの石棺の中の液体がネットで注目を浴びることになった。

様々な目的のためのキャンペーンにオンラインで署名を集め届け出るChange.orgでは、なぜか「黒い石棺からの赤い液体を人々が飲めるように」という不思議な(不気味な?)キャンペーンが掲載されたのだ。「innes mck」なる人物が発信者となっているこのキャンペーン、「我々は呪われた黒い石棺の赤い液体を炭酸入りエナジードリンクみたいに飲んで、その力を受け継ぎ死なねばならない」という趣旨なのだが、すでに日本時間7月24日の時点で2万人以上がこれに署名している。署名が2万5000人に達すれば「キング・オブ・スケルトン」にこの嘆願が届けられることに…なるのだろうか。

ただこのキャンペーンは真面目に(?)この呪いとミイラ水を飲みたがっているわけではないようで、キャンペーンの発信者はこの液体が「下水からだなんて言うのはよしてくれ、骸骨が排泄するのは不可能だってみんな知ってるだろう」などというコメントも残している。

 

ミイラ汁は飲んじゃダメ

ご丁寧にもLiveScienceはアリゾナ州立大学バイオデザインセンターの環境健康工学センター所長で教授の、微生物学者ロルフ・ハルデン(Rolf Halden)にこの赤い液体を飲んでも大丈夫か尋ねている。

死者のパワーを得れるかどうかはさておき、ハルデンによればどれだけ古いものであっても下水を飲むのは良いアイデアではないとしている。下水には微生物が数多く存在し、その中には危険なものがいる可能性がある。そのうえこの液体の中にはウイルスや細菌その他の病原体が存在する可能性も高く、耐性の非常に強い芽胞を形づくる事のできる細菌もいるかもしれないのだ。

それでも飲む必要があるのであれば、「殺菌する必要があるだろう」とハルデンはLiveScienceに語っている。

 

呪い

Credit: Roland Unger, CC BY-SA 3.0

エジプト、石棺、謎の液体、呪いのウワサ…と揃えば発掘に関わった人が次々と死亡したなどとされる「ツタンカーメンの呪い」などを連想させるかもしれない。

だがLiveScienceによれば、実際にはツタンカーメンの墓の発掘に関わりその直後に(と言っても5ヶ月ほど後だが)死んだのは発掘の資金提供者ジョージ・ハーバートひとりのみで、蚊の媒介する病気により死亡したとされる。LiveScienceによれば懐疑論者で奇術師のジェームズ・ランディは彼の著書『An Encyclopedia of Claims, Frauds, and Hoaxes of the Occult and Supernatural』の中で、このような呪いのウワサは考古学的発見にセンセーショナルな注目を集めると同時にメディアを寄りつかせない方法として使われたという。また、墓荒らしを寄せ付けないためにも効果的な戦略だったのだろう。

1991年にアルプスで発見された約5300年前のミイラ、アイスマンことエッツィを巡っても呪いのウワサがある。発掘に関わった一人は発見の翌年自動車事故で死亡、その後2004年に発見者夫婦の夫が発見現場付近で遭難死、その捜索チームのリーダーは遭難死した発見者の葬儀直後に心臓発作で死亡…などインデペンデント紙によればアイスマン発掘に関連した人々やアイスマンを撮影したジャーナリストまでが2005年までに7人死亡している。死因は事故、遭難、落ちてきた岩にあたった、脳腫瘍、発作、自然死など多種多様であり、そこに一貫性はない。

複数の遺体が一つの棺に入っている様は古代中国の呪術「蠱毒」を思い起こさせないでもないが、今回の黒い巨大石棺も今のところこの発掘に関連した死者はいないようだ。わざわざ自らミイラ水を飲んで「呪いにかかった」なんて言い出す人が出てこない限りは…