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涙を流す聖母マリア像に救われる心こそが奇跡

涙を流す聖母マリア様の像が世界各地で報告されているそうだ。

イタリア・シラクーザの涙の聖母教会(Santuario Madonna delle Lacrime)に祀られているマリア像は1953年に涙を流し始め、カトリック教会に唯一聖なる現象として認められている。

そのほかにもアメリカ、メキシコ、ハンガリー、マケドニア、アルゼンチンなど、世界中で涙や汗、芳香が漂う精油や、時には血さえも流すマリア様の像が確認されており、信仰を集めている。

マリア様はなにゆえ涙を流すのか。そしてそのまわりに集う人々にとって、その涙はなにを意味するのか。

 

神の涙

神の子イエス・キリストを受胎した聖母マリアは、彼女自身が神とされている。なぜなら、カトリック教会の教えでは聖母マリアは原罪を免れたため、罪の結果として死を迎えることもなく、また死の前触れとして老いることもなかったからだ。

その姿は生涯若々しい女性のままだったとされる。キリストの処刑後に亡骸を愛おしく抱き留めるピエタの像においても、30歳前後だったとされるキリストの生みの親にはとても見えないようなたおやかな姿だ。

そして聖母マリアの肉体と精神は滅びることなく、そのまま天上に召されていまなおこの世を見守っているとも考えられている。

その姿はしばしばまばゆい光とともに降臨し、お告げを託すと報告されているほか、世界各地の聖母マリア像に異変をもたらすと信じられている。

 

涙の意味

では、聖母マリア像の涙が意味するものとは?

米カレッジオブザホーリークロス教授、マシュー・シュマルツ(Mathew Schmalz )教授によれば、聖母マリアは自身がこの世に生きていた間に経験した「7つの悲しみ」のために涙を落とすそうだ。その悲しみの主たるものが愛する一人息子の壮絶な死であったことは言うまでもない。

さらに、聖母マリアの涙は人類の罪の深さゆえに落とされ、人類に対するある種のお告げとしても理解できるという。

 

信仰と疑い

お告げとして信仰される一方で、聖母マリアの涙は巧妙なトリックに過ぎないと信じる人々もいる。

冒頭のシラクーザの涙の聖母像は、1995年に科学者によってその涙の仕組みが解明されたとThe Independentが伝えている。シラクーザの聖母像は石膏でできており、多孔質なつくりのため液体が浸透しやすい。聖母像の表面は浸透性のない釉薬で覆われているため、石膏の部分に水を含ませても出口がないまま水分が流れ出ることはない。

ところが、像の目の部分にかすかな傷をつけて釉薬の膜に穴を開けたらどうなるか。その部分から石膏に吸収されていた水分が流れ出て、あたかも涙が湧き出すように見えるのではないか。

シラクーザの聖母像は一般人の手に触れられない場所に安置されているため、実際目の部分に傷がついているかはまだ確認されていないが、もっともらしい説だ。

シュマルツ教授によれば、このほかにも血の涙を流すとされていた聖母像からはその像の持ち主の血液が検出されているほか、固形の油を像の表面に塗ることで温度が上昇した時にその油が溶けて涙のように流れ落ちる仕組みも説明している。

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涙のまわりに集う信仰の輪

しかし仮に「偽物」だったとしても、涙するマリア像に集まる信仰の輪は本物だとシュマルツ教授は指摘している。涙の真偽を問うよりもはるかに大切なのは、その像に集う人々の心の葛藤や、希望や、得られた安堵感なのではないだろうか。

聖母が落とす涙によって、確実に癒されている人々が世界中にいる。涙するマリア像のまわりに信仰の輪を築き上げる人々こそが奇跡であって、その真偽は誰にも問えるものではない。

聖母の涙は迷信以上の素晴らしい作用をもたらしているとシュマルツ教授は結論づけている。

 

 

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