進化の歴史を正確に描くために必要な化石は質より量?…モササウルスのケーススタディー

すでに絶滅した生物のことを知るために重要なのは化石だ。しかし全体像が見つかれば幸運だが、生物の僅か一部でしかない破片や顎の一部しか見つからないこともある。研究ではこれがその生物の多様性や進化の過程の理解に影響があるかが調べられた。

 

化石の質

そのような化石標本の発見から太古の昔に生きていた生物の姿が見いだされ、これが繰り返されることで絶滅した生物たちが生きていた時代の生態系、生物多様性の図が浮かび上がっていく。しかし「生物の歯の化石」などといった非常に限られた標本から理解できる物事は限定的であり、そこから論理的に導き出される物事の正確性にも限りがある。ということは、我々の過去の生物多様性への理解は化石標本の「質」に影響されるのだろうか?

これまで化石記録の「質」といったときに、多くの場合それが指すのは化石種の数であった。しかしこれとは別に、化石の完全性、つまり全身の骨格標本が残るものを「質」が高いと考えるとどうだろう。骨格の一部しかないなどで標本が不完全であった場合に、これが種の多様性に対する認識に影響を与えるかどうか、それをブリストル大学とリーズ大学の研究者たちはモササウルスのケーススタディーで探った。

 

化石が豊富なモササウルス

Credit: Meridas, CC BY-SA 4.0

ジャーナルPalaeontologyに7月13日に発表された研究は、白亜紀後期に繁栄した海に生きた捕食生物、モササウルス科を対象に行われた。モササウルス科の化石は古くは1808年から見つかっており、これまでに200年もの間研究が行われてきているので研究対象として適しているのだろう。ヘビやトカゲと近いと考えられているモササウルス科の仲間には様々な種がおり、中には15m以上の大きさにもなるものもいた。

研究ではモササウルス科の4083もの化石標本が調査され、それらを化石の完全性によりスコアリング、数学的モデリングを用い分析した。その結果、化石の完全性はモササウルスの多様性のバイアスとはならず、豊富な化石記録がその多様性と進化の歴史を正確に描くことができるという結論に至った。

研究の共同執筆者であるリーズ大学地球環境学部教授のアレックス・ダンヒル(Alex Dunhill)は、古生物学者は脊椎動物の化石記録にはサンプリングによる大きなバイアスがあると考えがちであり、それは事実かも知れないが、とした上で、研究では「化石標本の完全性の違いが、大きな規模の進化パターンへのバイアスにはならない」ことが示されたとしている。