記録的な猛暑がイギリスのあちこちに古代遺跡の輪郭を浮き上がらせている

ミステリーサークル?それとも宇宙人の落書き?

猛暑を迎えたイギリス・ウェールズ地方の畑や野原に、ふしぎな幾何学模様が相次いで出現している。

これらの模様は「クロップ(農作物)マーク」、または「ソイルマーク」と呼ばれ、地下に埋まっている古代の遺跡などが地表に植えられた農作物の育ち方に影響した結果、成長具合に差が生じて緑の濃淡を作り出すことで現れる。農作物が実りの時期を迎えて収穫されるまでだけに見られる現象だ。

城跡やかつての要塞、農園、邸宅、墓地、古墳などの輪郭が発掘せずとも空から一目瞭然となり、考古学者たちにとっては千載一遇のチャンスだという。今まで知られていた遺跡以外にもまったく新しい発見が多数報告されており、中には鉄器時代までさかのぼった遺跡の発見も。新しいものでは第二次世界大戦時に使われたシェルターなども見つかっているという。

ウェールズ古代歴史遺跡王立委員会(Royal Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales)の航空調査を受け持つトビー・ドライバー氏は、「1997年に航空調査を始めて以来、こんなコンディションは一度もなかった。新しい遺跡が次々と発見されて驚いている」と語っている。

Credit: Toby Driver / Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales
先史時代の囲い。円の内部にはローマ時代のものとみられる邸宅跡も

 

Credit: Toby Driver / Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales
鉄器時代の農園

 

Credit: Toby Driver / Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales
青銅器時代の墓地

 

Credit: Toby Driver / Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales
新しく発見された鉄器時代の農園跡

 

空から確認できるこれらの点や線や円をみただけで、中世の城跡や共同墓地など見分けてしまう航空調査隊の目利きもすばらしい。

クロップマークの成り立ちを理解するにはウェールズ古代歴史遺跡王立委員会のイラストがとてもわかりやすい。

Credit: Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales

記録的な暑さが土壌の水分を奪い、農作物にストレスをかけると、根を深くまで下ろしているため水分補給ができる株とできない株との間に成長の差が出る。

地下に石垣が埋まっている場合は石が邪魔して根が充分に育たず、農作物が矮小化してしまう。逆に地下に堀や壕が埋まっている場合は、根を下ろしやすいためより丈夫に育ち、まわりの株より青々と茂る。その生育の差がクロップマークを作り出すのだ。

なお、イギリスでは夏の麦の収穫が迫っており、クロップマークを見られるのも長くてあと2週間ほどだとドライバー氏は語っている。

それまでにできるだけ多くのクロップマークを画像に収めた後は、それらの遺跡の記録と登録作業が待っている。その中でも特に歴史的意義が高いと判断されたものだけ本格的な発掘調査に進むそうだ。

お手軽に遺跡を発見できて考古学者には願ってもない状況なのだが、ウェールズの住民にとっては深刻な水不足にもなりかねない異常事態だ。手放しには喜べない。