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その本危険…カバーがヒ素でコーティングされた昔の本

読んだら下手をすると死んでしまうかもしれないルネッサンス時代の「毒本」が南デンマーク大学の図書館に3冊発見された。緑色をしたこれらの本は、なんとカバーにヒ素が使われているのだ。

 

ことのいきさつ

The Conversationに寄稿する南デンマーク大学の研究者たちによると、元々本が発見された経緯はこういうものだ。

近世に製本された本には中世に書かれた本の羊皮紙が使用されていることがあり、これを蛍光X線分析することで中世に書かれた内容を読み取ることが可能であることがライデン大学の書籍歴史家エリック・クワッケル(Erik Kwakkel)により明らかにされている。

南デンマーク大学でも中世に書かれたローマ法や教会法の一部が本のカバーに用いられた書籍が3冊見つかっていた。しかしこれら3冊のカバーには緑のペイント層があるために、その下にある手書きのラテン語テキストを読み取るのは困難であった。そのため蛍光X線分析が試みられたのだ。

 

ヒ素カバーの本

蛍光X線分析で、緑のペイントの下にあるインクを読み取ろうとしたのだが、この分析によりこの緑色の部分がヒ素の層であることが判明した。

ヒ素は非常に毒性が強い。その種類と暴露時間により症状が異なるのだが、胃や腸の不快感、吐き気、下痢、肌の変化に肺の炎症などの症状がある他、発がん性もあるし死に至ることもある。

本のカバーに使われているのは、「パリスグリーン」、「エメラルドグリーン」などの名でも知られる「花緑青」であると見られる。19世紀初頭に工業生産が開始されたこの色素は、製造が容易であり美しい色合いに色あせにくいという特性を持ち、特に油彩絵の具やラッカーなどとして用いられている。そのためその頃描かれた絵画にもヒ素が含まれているものが多いほか、服や壁紙、そして本のカバーなどに用いられたわけだ。カバーを素手で触って舐めたりしたら危険極まりない。

 

危険な緑

Credit: Wellcome Collection, CC BY-SA

こちらの絵は1859年に記された「緑のヒ素により起こる症状」を記したもの。19世紀後期になるとその毒性が一般に知られるようになり、ヒ素系の色素の使用が止められて、代わりに農場の殺虫剤などとして使用され始め、20世紀中頃までには農場での使用もされなくなった。

しかしHyperallergicによれば殺鼠剤としてや、遺産早く巡るために盛る毒「遺産パウダー」としてのヒ素の力が知られるようになってもまだ、このような色素は化粧品や子供の玩具の塗料、ヒ素で染められたドレスや帽子や、なかにはハエがよってこないようにとヒ素にディッピングされた肉を食べたりすることもあったそうだ。

またThe Conversationによれば状況によっては、亜ヒ酸や亜ヒ酸塩などのヒ素化合物が微生物によりアルシンに変えられてしまうこともあり得る。アルシンはニンニクのような臭いのする毒性の高いガスだ。そのため壁紙にヒ素を含むものが使われていた場合、ジメジメした室内などではアルシンとなり室内の人がこのガスにより死んだりすることもあったようだ。

なんとも恐ろしい話だが、アンティーク好きの方は緑色をした19世紀の本や壁紙には注意した方がいいかもしれない。

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