月で花粉症の症状?実は危険な月の埃

月から帰還したアポロ計画の宇宙飛行士たちは、喉の痛みや目のうるみなど、花粉症のような症状を訴えた。その原因は宇宙服についてきた月の埃だ。

 

月花粉症

月の埃は、くしゃみや鼻づまりなどの症状を、長いときには数日間も宇宙飛行士たちに引き起こした。月を訪れた12人全員にこの症状が出ており、アポロ17号で月を訪れたNASAの宇宙飛行士ハリソン・シュミットはこの症状を指して「月花粉症」(lunar hay fever)と形容した。

アポロ計画以降、人類がそんな月花粉症に悩まされることはなかったが、昨年末にはアメリカのトランプ大統領が有人月面探査再開を指示しており、月の埃の危険性を真剣に考える必要性が出てきている。

ESAの研究プログラムでは、そんな月の埃がどれだけ人間に危険かを判断しようとしている。

 

地球の埃よりもだいぶ危険

Credit: NASA/JSC

ESAによれば、月の埃は火山活動のある惑星体によく見られるケイ酸塩を含んだもので、地球では坑夫などがを吸引することで肺を傷つけたり肺に炎症を起こしたりする。月の埃は研磨性が強く、宇宙服のブーツ層に穴を開けるのみならず、サンプル容器の真空密封も壊してしまう。

地球上の埃は長い間雨風を受けることで滑らかになるが、月の埃は鋭く尖っている。これが地球上であれば尖った埃であっても床に落ち、それを掃除機で吸ったり濡れ雑巾で拭き取ることはたやすいが、地球の6分の1の重力である月では、大気中に長い間埃が留まるためそれだけ肺に入りやすい。その上、大気がないため太陽からの放射線の影響が強い月では、土壌が帯電することにより、埃が浮き上がるのだ。

地上ではこのような月の埃を再現するのは難しいため、月の埃を吸引することによる潜在的な被害は正確にはわからない。だがGeoHealthで今年4月12日に公開された研究では、月の埃を模した物質に細胞を暴露して、この影響を調べている。その結果は、長期間暴露されると、肺や脳の細胞が破壊されるというものであった。

あくまでも月の埃を模した地球上物質による長期間暴露の場合ではあるが、なんだかあまり楽しい結果ではない。次に人類が月に赴くときには有効な月花粉症対策が取られることを期待したい。