読者の皆様は「蜘蛛の卵」を目にしたことはあるだろうか?卵は通常卵嚢に包まれているため見えないものの、実際にはまるで様々な味の飴玉のようにカラフルなのだ。
カラフルな卵
オーストラリア、クイーンズランド大学疼痛センターの調査員で化学者のグレン・キング(Glenn King)は自身のTwitterに数種の蜘蛛の卵の写真を載せている。
アシダカグモ科のHolconia属の卵はかき氷のメロン味みたいなブリリアントグリーン、コガネグモ科のスズミグモ属の卵はおせち料理のかずのこのような黄色い色をしている。なお、トップ画像はコマチグモ属のCheiracanthium inclusumの卵だ。
食べちゃダメ

飴玉みたいに見えるからといって、蜘蛛の卵を食べてはいけない。2017年の研究では21科、39種の蜘蛛の卵が調べられているが、そのうち13種のものはネズミが死ぬほどの高い致死性、4種は中程度の致死性の毒が卵にあった(Schmidt. et al. 2017, Journal of Arachnology)。
でもなぜ痛みを研究するはずのキングのラボで毒を持った蜘蛛を調べているのだろう?実は彼のラボでは蜘蛛やムカデ、サソリなどの生物の毒を使って、神経系の障害による慢性疼痛、てんかん、脳卒中などの薬を作れないかと研究しているのだ。これらの症状はみな活動過多もしくは変異したイオンチャンネルの影響を受けており、これらの生物の毒でイオンチャンネルを抑制したり活性化したりすることができれば有効な薬となる可能性がある。つまり文字通り「毒薬変じて薬となる」というわけだ。
何故色が?

しかし卵嚢に包まれてしまう蜘蛛の卵の色が様々である理由は今もわかっていない。LiveScienceに語る同大学の大学院生アイザック・タッカー(Isaac Tucker)よれば、10万種いるとされる蜘蛛の中でどれだけの種がこのようなカラフルな色の卵を持っているかは不明だ。
また、何故このようなカラフルな卵であるのかも謎ではあるが、同じく様々な色合いの卵を持つ動物としては鳥が挙げられ鶏の場合は種により色のついた化学物質の量が違うために卵の色が異なるとのことだ。