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神経ガス検出装置にレゴを使う?どこでも手に入り持ち運びも組み替えも容易と研究

神経伝達を阻害する危険な化学兵器、神経ガス。それを検知するための装置筐体にレゴを用いるというアイデアが論文に掲載された。

 

危険な神経ガス

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今年4月にシリアの首都ダマスカス東方の町ドウマ行われた攻撃は神経ガスによるものとされる。日本では1995年の地下鉄サリン事件で使用されたサリンなどでも知られる神経ガスは、呼吸器系だけでなく皮膚からも吸収されるため、ガスマスクだけでは防ぎきれない。

そのため神経ガスの危険は攻撃の行われた場所の人々にだけではなく、その被害者を救うために現場に駆けつけた救急隊員にとってもとても危険な存在だ。しかしそれぞれの神経ガスを検知判別するための装置は高価かつ持ち運びが容易ではない。

 

新たな神経ガス検知デバイス

テキサス大学オースティン校の化学者エリック・アンスリン(Eric Anslyn)と彼のチームは神経ガス検知のための新たな化学化合物を開発した。これは神経ガスに暴露されると反応、それに対応した色に光り、同時にガスを中和するというものだ。

光るのは一見してわかるものの、光の強さで示されるより正確な神経ガス濃度は人の目では判らない。だが従来の3万ドルもする巨大な実験設備を用いずとも、スマートフォンと「暗室」を用いることでてこれを読み取ることが可能だ。

しかしその暗室は外部からの光を通さない必要があるだけではなく、スマートフォンも固定できる仕組みであり、中にはサンプルを光らせるためのUVランプや、サンプルを乗せたウェルプレートも入れられるようになっていなければならない。

 

レゴブロックでつくる暗室

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ここで登場するのがレゴブロックだ。元々の案ではこの暗室を3Dプリントするつもりだったようだが、Popular Scienceで語る共同執筆者のレイラニ・スミス(Leilani Smith)によれば3Dプリントの方が高価で作るのも難しかったという。そのため神経ガスのサンプルとUVランプを内部にいれ、スマートフォンを乗せられるレゴ製の暗室が作られたのだ。

共同執筆者のペドロ・メトラがテキサス大学オースティン校のニュースリリースに語るところではレゴは「どこに行っても同じ」規格のものが手に入れられる。このことは論文にも記されており、3Dプリントを行うためには暗室のデザインファイルと3Dプリンター、インクとなるフィラメントも必要であり、そのため3Dプリントするよりレゴの方が制作に用いるには「はるかに容易な媒体」であり、ユーザーの必要性に合わせて組み替えられるし、持ち運びの際にはバラして袋に入れてしまうこともできる、と数々の利点が述べられている。

シンプルでポータブル、現場で組み立て可能な神経ガス検出装置のデモンストレーションとしてこれが成功したとする今回の論文だが、願わくばこの手法で神経ガス検出に当たる人がレゴが得意な人であることを祈ろう。なおこの研究はACS Central Scienceにて6月27日に発表されている他、化学化合物の色と明るさを識別するためのソフトウェアはGitHubで無料公開されている。

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