犬の鋭い嗅覚が農業を救う…アボガドを枯らす菌を嗅ぎ分けるシェパードたち

犬は賢いし、愛情表現がストレートだし、文句なしに可愛い…だけではない。鋭い嗅覚を頼りに治安を守り、人命救助活動に励み、なんと農作物の病気まで予防してしまうそうなのだ。

日本警察犬協会によれば、犬には副嗅覚器として鋤鼻器(じょびき、別名ヤコブソン器官)が備わっているため人間の1億倍の嗅覚を持ち、臭いのする方向までわかるという。この突出した能力のおかげで、犬はこれまでにも麻薬犬として、または盲導犬として大活躍してきた。

それどころか、院内感染を引き起こすスーパー耐性菌やがん細胞まで嗅ぎ出した研究事例も報告されている。

そして最新の研究では、なんと植物を枯らす菌を臭いで感知できることがわかったそうだ。

 

アボガドの死神

アメリカ南部で2003年から流行しだした「Laurel wilt disease(直訳:ゲッケイジュ枯れ病)」はクスノキ科の植物に不可逆的なダメージを与え、すでに3億本ものゲッケイジュの樹木を枯らしてきた。

やっかいなことに、同じクスノキ科の樹木であるアボガドにも被害が及び、特にフロリダ州やカリフォルニア州の農園が経済的な打撃を受けている。

ZME Scienceによれば「Laurel wilt disease」を人間が感知するのは非常に難しいし、今のところ特効薬もない。病気に罹った樹木はたちまち弱りはじめ、症状が目立ってきた頃にはもう手遅れなうえに、根を通じてほかの樹木にも病気が広がってしまっている。

成虫になったばかりのヤマモモノキクイムシとその蛹
Credit: Lyle J. Buss / University of Florida

ここからはちょっとマニアックな内容だが、病原菌であるRaffaelea lauricolaは、ヤマモモノキクイムシ(Xyleborus glabratus)という昆虫に培養されるそうだ。もともとはアジア原産で積み荷と共に太平洋を渡ったヤマモモノキクイムシの成虫は、クスノキ科の樹木の幹にトンネルを掘り、その壁にRaffaelea菌を植えつけてそれをエサにする(出典:日林誌より)。

Raffaelea菌の毒が樹木を枯らしてしまうので、寄生された木にとってはヤマモモノキクイムシは死神のようなものだ。

 

犬が唯一の特効薬

なんとかこのキクイムシとRaffaelea菌を駆除できないか。いろいろな方法を試した結果、科学者たちの結論は「犬」だった。

数ある犬種のなかでも特に嗅覚に優れているマリノア(ベルジアン・シェパード)犬一頭と、ダッチ・シェパード犬2頭に菌の臭いをかがせて調教し、アボガド農園で実際どの木が病気に罹っているかを判定させた。

Credit: DeEtta Mills / HortTechnology
研究が発表された学術誌の表紙。臭い判定の結果は…?

結果はとても信頼できるもので、229回のトライアルの末12回しか誤判定がなかったそうだ。実地での実験だったうえに3頭はあらゆる天候に翻弄されることとなったが、たとえ高温でも高湿度でも正確に菌の臭いを嗅ぎ分けた。今後の実用化に向けて、明るい展望が開けたといえる。

「『犬は人間の最良の友(Dogs are a man’s best friend)』とはいうが、犬との絆は飼い主やトレーナーの域を超えて、ひとつの産業を救えるかもしれない」と研究者はZME Scienceに語っている。