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トランプ大統領の「宇宙軍」創設指示は、中国とロシアへの対抗策

2018年6月18日(現地時間)、米トランプ大統領はホワイトハウスで行われた国家宇宙会議にて、「宇宙軍」の創設を国防総省に指示した。

もし議会の承認が得られれば、宇宙軍はアメリカにおける陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊に続く、6番目の「軍種」となる。

トランプ大統領の指示の背景には、拡大する中国の宇宙開発とロシアの動きがある。
 

アメリカ空軍を再編して宇宙軍を創設へ

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トランプ大統領は「アメリカが宇宙でプレゼンスを持つだけでは不十分で、軍事的に優位に立つ必要がある」と語っている。さらに、「中国やロシアに先行を許すべきではない」とも発言した。

旧ソ連との宇宙開発競争から、月面有人探査、そして国際宇宙ステーション(ISS)の建築、運用まで、アメリカは宇宙開発における主導的な立場であり続けた。一方で、軍事衛星の運営などはアメリカ空軍が中心に担当してきた。

トランプ大統領が指示した宇宙軍には、それぞれの軍種から宇宙に関わる部門が統合される予定だ。これにより、宇宙における軍事関連の効率的な運用が可能になると期待される。またトランプ大統領は、宇宙交通管理システムや軌道上のゴミこと「デブリ」に関する指示も行っている。
 

存在感を強める中国と、ロシアの動き

※画像は「天宮1号」 Image Credit by CMSA

宇宙開発分野で近年目覚ましい発展を遂げているのは、中国だ。同国は宇宙に人が滞在できる実験モジュールの運用経験があり、2022年からは宇宙ステーション「天宮」の運用を開始する予定だ。

さらに軍事でも、2015年12月には人民解放軍に弾道ミサイルや宇宙関連の担当が想定される「ロケット軍」「戦略支援部隊」が設立されている。

mage Credit by Anatoly Zak / RussianSpaceWeb

一方、ロシアは2024年より後に国際宇宙ステーションのロシア側モジュールを3基切り離し、それをもとに独自の宇宙ステーションを建設すると表明している。なお、国際宇宙ステーションは2024年より後の運用方針が決まっていない。

さらにロシアは2015年8月に空軍と航空宇宙防衛軍を再編し、「ロシア航空宇宙軍」を創設。こちらは空軍分野だけでなく、航空ミサイル防衛から軍事衛星までを担当することになる。
 

国際貢献でプレゼンスを見せたい日本

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一方専守防衛をうたう日本は、軌道上から地上を監視する情報収集衛星を運用しているものの、公的には宇宙空間における軍事活動を展開できないのが現実だ。

アメリカは月表面に宇宙飛行士を再び立たせるべく有人探査計画をすすめており、日本はこの計画に科学的な協力を表明している。これはISSの建築と運営に協力しつつ、JAXAの宇宙飛行士をISSに送り込む座席を確保してきた戦略と似ている。
 

激しさを増す主導権争い

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圧倒的な勢いで進む中国の宇宙開発と、それに対抗しようとするアメリカ。宇宙開発は平和利用が前提としてすすめられてきたが、どの国が主導権を握るのかという水面下の争いは激しさを増すばかりだ。

塚本直樹

*Discovery認定コントリビューター

IT・宇宙・ドローンジャーナリスト/翻訳ライター。フリーランスとしてドイツを中心にヨーロッパにて活動しつつ、日本でのラジオ出演やテレビ、雑誌での解説も。 @tsukamoto_naoki

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