「iPhone X」の売れ行きは好調だが、どうしても賛否の分かれる点がある。それは、画面上部に垂れ下がるように切れ込んだ「ノッチ」の存在だ。
昨年iPhone Xが発売された時、ノッチのデザインは大いに議論を呼んだ。しかし2018年になると、数多くのAndroidスマートフォンにもノッチが搭載された。
スマートフォンになぜノッチが必要だったのか、そして今後はどうなるのか、少し考えてみよう。
カメラを押し込むための苦渋の決断

スマートフォンにノッチが採用されたのは、iPhone Xが初めてというわけではない。それ以前にも2018年5月には上画像の「Essential Phone(PH-1)」が、さらに2017年には「AQUOS S2」がそれぞれノッチを搭載していた。
ノッチがスマートフォンに採用される理由は、なるべくディスプレイサイズを大きくしたいからだ。
ノッチ部分にカメラやセンサーを配置することで、本体前面のほぼすべてが画面となる全画面スマートフォンが実現したのだ。
ノッチによる新たな提案をしたアップル

一方、ノッチを単なるカメラの収納場所に終わらせなかったのがアップルだ。
iPhone Xでは、ノッチ部分に「TrueDepthカメラ」が内蔵されている。これは、3万個以上のドットを顔に照射し、3Dで深度マップを作成。そして、画面ロックの解除やモバイル支払いに利用するというもの。この生体認証システムは「Face ID」と呼ばれている。
Face IDの精度は極めて高く、手が濡れていても利用できるというメリットがある。Androidスマートフォンでも一部で同様の機能を採用するものが現れているが、アップルの先進性は明らかだ。
ノッチの次を模索するスマートフォンメーカー

一方で、ノッチすら廃止して「真の」全画面スマートフォンを目指すメーカーもある。たとえば中国Vivoは今年、まるでファインダーのようなポップアップ式のフロントカメラを採用したスマートフォン「NEX」を発表している。
また中国Doogeeは、スライドする2層式の本体の下段部分にカメラを搭載することで、ノッチのない全画面スマートフォンの開発に成功している。
ノッチデザインは絶対ではない

しかし、なにも絶対にノッチが現代スマートフォンに必要というわけではない。たとえば本体の4隅の目立たない場所にフロントカメラを追いやるといったアイディアも存在する。
もちろん技術的な課題から、将来的にどうしてもノッチが排除できない可能性もある。しかし、個人的には今後のスマートフォンの発展を楽しみにしたいものだ。
塚本直樹
*Discovery認定コントリビューター
IT・宇宙・ドローンジャーナリスト/翻訳ライター。フリーランスとしてドイツを中心にヨーロッパにて活動しつつ、日本でのラジオ出演やテレビ、雑誌での解説も。 @tsukamoto_naoki