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ストーンヘンジを建てた新石器時代人はすでに「ピタゴラスの定理」を理解していた?

古代ギリシャの数学者ピタゴラスが生まれる2千年も前から、人類はすでに「ピタゴラスの定理」を理解して建築設計に利用していた可能性が濃厚になってきた。その動かぬ証拠がストーンヘンジだ。

古代遺跡研究家のロビン・ヒース氏によると、ストーンヘンジは新石器時代人が天文学の知見に基づいて築き上げた巨大な天体現象カレンダーだという。高度な幾何学を利用して夏至と冬至、春分と秋分などの重要な時を刻むよう設計されていたことが徐々にわかってきている。

例えば、夏至にはヒールストーンと呼ばれる高さ6mの玄武岩(上の写真中央に見えるやや小さい岩影)と、中心にある祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇る。その神々しい日の出を見に、いまでも夏至の朝には多くの人がストーンヘンジに集う。また、冬至の日にはヒールストーンから祭壇石を結ぶ線の対極に日が沈む。

今年の夏至に合わせて上梓されたヒース氏の新刊『新石器時代の巨石(Megalith)』によれば、紀元前2,750年頃のストーンヘンジには現存している円形の巨石群よりずっと外側に同心円を描いた堀が張り巡らされていた。堀の内側に建てられた4つの巨大な岩を四角に結び、さらに対角線を引いた二つの三角形は、特定の比重を持つ完璧なピタゴラスの三角形だったそうだ。

さらにその四角と三角の線を放射線状に伸ばしていくと、夏至と冬至、春分と秋分などの日付に日が昇る方角とピッタリ一致することも発見した。

The Telegraphによれば、ほかにも春の到来を知らせる「Imbolc」や、夏の麦の収穫を知らせる「Lammas」、夏期に高原で太らせた家畜を連れ戻し、冬に備えて屠殺する「Samhain」(現ハロウィーン)など重要な祭日を正確に表わしているという。

また、ピタゴラスの定理を使うことで、ストーンヘンジの巨石は地面と完璧な垂直を成すよう設計されていた。現在は4千年以上の時を経て崩れかけてはいるものの、かつては完璧な垂直と平行線から成る幾何学的に美しい建造物だったのではないか。

確かにピタゴラスの定理を証明したのはピタゴラスに間違いないが、果たして彼が人類の歴史上初めてだったのかは定かでない。証明されずとも、定理自体はピタゴラスよりずっと前に発見され、建築などに利用されてきたようだ。

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新石器時代にイギリスに生きた人々にとって、ストーンヘンジは太陽と月の動きを正確に示し、生活のリズムを整える重要な場所だったはずだ。「石器時代人」と聞くとなにやら野蛮で無知な人類の姿を想像してしまうが、じつは非常に高度な技術と知識を持っていたのではないかとヒース氏は考えている。

むしろ野蛮なのは現代人のほうかもしれない。ストーンヘンジを維持管理する非営利団体イングリッシュ・ヘリテージによれば、17世紀以降ストーンヘンジに訪れた観光客が石に落書きしたり、イニシャルを掘ったり、ノミとハンマーを持ち込んで石を削ったりとさんざんな器物損壊を繰り返してきたそうだ。

倒れてしまった巨石の被害が特にひどく、かつてピタゴラスの定理を使って正確な90度を刻んでいたであろう美しい直角が、削られたり、踏まれたり、時にはキャンプファイヤーの土台に敷かれたりして完全に失われてしまっているという。

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古代人の智恵に敬意を表わすためにも、ストーンヘンジとはこれくらいの距離を置いて見守りたいものだ。

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