老いた魚が海深くにいる理由、生態でも温暖化でもなく人間の活動が原因

老いた魚は水の深いところに居る…これまでそれが通説だったが、最新の研究によればそう考えられていた理由は人間の活動にあった。

 

ハインケの法則

1990年代に北海のプレイス(ヨーロッパツノガレイ)やタラ、スケトウダラなどの観察から導き出された「ハインケの法則」(Heincke’s Law)というものが存在する。これは、年を取った魚はより水深の深いところに行くというものだ。この法則は幅広い種類の魚に当てはまるように見えたため、生物学者たちはこれが魚の個体発生的なライフサイクルとして自然に老いた魚が深い場所に行くものだと考えられてきた。

その原因としては、水深が深い方が水温が低いため代謝要求が低く長く生きることができるとか、浅瀬での激しい競争が老いた魚を下に追いやるとか、はたまた逆に魚は深いところが好きだが若い魚は老いた魚に追い返されて浅いところに留まらざるを得ないなど、様々な説が出されていた。

 

理由はなんだ?

しかしZME Scienceはこの法則が近年覆されつつあるとしている。2017年のシューマッハによる研究(L. Schumacher et al., 2017)などでは、水深と魚の大きさに相関性が見られないという結果が出ているのだ。一体何故なのか?カナダの研究者らにより6月4日にPNASで発表された研究では、これまで調べられてきた魚種が、商用に釣られている魚であることに注目、老いた魚が深い位置に行くのは、これまでの研究で考慮されてこなかった「人が原因」ではないかと考えた。

研究者たちはカナダのノバスコシア沖のスコシア大陸棚(Scotian Shelf)東部での1970年から1989年までのタイセイヨウダラのデータを分析した。この期間のデータはハインケの法則に沿って、より大きく老いた魚は深い位置にいることを示していたが、コンピュータによるシミュレーションで捕獲された魚の深度と大きさを、漁業による「魚の死亡率」と関連付けたところ、漁業率と魚の生息範囲の変化が一致した。漁業により魚の死亡率が上がると、大きな魚はより深い位置に移動したのだ。この場合、漁獲量がゼロの場合、深度による魚の年齢の違いは出ないという結果が出た。

こう書くと難しく聞こえるが、何のことはない、漁業ができる深度が定められており、より大きい魚を選択的に捕っていった結果、浅いところに残ったのはサイズの小さな魚だけだった、ということだ。

 

理由は人にあった

Credit: Jonn Leffmann, CC BY 3.0

伝統的にタラ漁が盛んなカナダだが、ZME Scienceによればタラの激減を受けて1993年以降今までずっと一時禁漁となっている。幸運なことにこの禁漁により、研究者たちは先のシミュレーション結果が実際に魚の大きさと生息範囲にどう影響を与えたのかを調べることができたのだ。そうして2006年から2010年までのデータを調べたところ、禁漁となっているこの期間タイセイヨウダラは年齢を問わず水深が浅い場所に暮らしていた。

つまり、ハインケの法則を造り上げたのは魚のライフサイクルでもなんでもなく、人の漁業だったのだ。なお研究では魚の生息深度が深くなることが海の温暖化の指標として主張されていることについては注意深くすべきとし、その分析には人間による魚の搾取の影響も考慮に入れるべきだとしている。