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蜘蛛研究者「蜘蛛を殺さないで」…その理由とは

日本には「朝の蜘蛛は殺すな」という俗信があるが、The Conversationでは昆虫学者が「家の中の蜘蛛を殺すな」と語っている。多くの蜘蛛は人に害はなく、家の中にいる害となる虫を食べてくれることもあるからだ。

 

蜘蛛を殺さない理由

ノースカロライナ大学で昆虫学のエクステンション・アソシエイトの職に就くマット・ベルトーネ(Matt Bertone)がThe Conversationで語っているのは、なぜ家の中に居る蜘蛛を殺すべきでないか、その理由だ。

虫など居ない外界から遮断した快適な環境というのが家に住むものの理想なのだろうが、実際には蜘蛛だけでなく様々な虫が家の中に暮らしていたり、家の中に侵入してくる。

ベルトーネらはノースカロライナ州の50件の家を調査してどのような節足動物が屋内に住んでいるのかを調べている。ジャーナルPeerJで2016年1月19日に発表されているそれによれば、家の中でもっとも一般的な蜘蛛はヒメグモ科とユウレイグモ科。

どちらの科の蜘蛛も、糸を張りそこに掛かる獲物を待つ。蜘蛛は他の虫を捕まえて食べてくれるし、人にとって害となる蚊なども食べてくれる。そして時には他の蜘蛛だって食べてしまうのだ。

 

毒は大丈夫?

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ベルトーネによればほぼ全ての蜘蛛には毒があるという。そんな危険な虫は殺した方がいいのではないかと考えてしまいたくなるが、ベルトーネ曰く大半の種の持つ毒は人間に害となるには弱すぎるし、それも人の肌に対して弱く小さすぎる蜘蛛の牙が人間の皮膚を突き破ることができればの話。

そして蜘蛛は人間を捕食しようと襲ってくることはなく、できることなら人間を避けようとしているので噛まれることは希。カナダ、マギル大学の准教授クリストファー・M・バドル(Christopher M. Buddle)による蜘蛛に関するブログ「Arthropod Ecology」では、そもそも蜘蛛に噛まれることは非常に希で、「蜘蛛に噛まれた」とされる例も誤診であることもあり、実際噛まれて出た症状もとしてもカリフォルニア州南部での182件を調べた研究では蜘蛛の毒によるものは僅か3.8%で、85.7%はバクテリア感染によるものだったという投稿を載せている。

もちろん危険がある蜘蛛もいる。例えば日本でも話題となったクロゴケグモなどで知られるゴケグモ属と、名前からして毒が危険そうなドクイトグモなどで知られるイトグモ属などは人間に危険がある毒を持つ。しかしこれらにしても噛まれることは希だ。アメリカ疾病予防管理センターCDCも、クロゴケグモやドクイトグモなどのアメリカに存在する毒蜘蛛は、通常攻撃的ではなく、噛まれるケースの多くは蜘蛛が閉じ込められた状態になったり、意図せず触ってしまったりした場合だと記している。そしてこれらの蜘蛛は室内にも時折入ることがあるものの、によるリスクが高いのは屋外で仕事をする人だとのことだ。

もちろんそれらの危険な蜘蛛に対しては気をつけるべきだろう。だが家の中に暮らす無害な蜘蛛に関しては、ベルトーネは「自然と、そして屋内エコシステムの大切な一員」である蜘蛛をむやみに殺さず、耐えられないのであれば外に逃がすか、共存するかしてもらいたいとしている。家の中の蜘蛛を全て殺したつもりになったって、どのみち蜘蛛たちはあなたに気づかれないところであなたのルームメイトとなっているのだから…。

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