Credit : Eleanor Caves via Duke Today

実はちゃんと見えていない?動物たちのいろいろな見え方

こんな「ペットあるある」体験はないだろうか。金魚に浮きエサをあげても、まったく違うところでパクパクしている。ハムスターにケージ越しにエサをあげようとしてもミスばかりで「おーい、どこ見てるんだ」状態に…。

ちゃんと目が見えているのか心配になってしまうかもしれないが、金魚もハムスターも見えてはいるのだ。ただし、人間とは違う見え方で。

学術誌『Trends in Ecology & Evolution』の5月号で発表された論文によれば、人間は動物の中でも特に視界がクリアな生き物のようだ。ヒトにはネコの7倍、ネズミや金魚の40~60倍、そして蚊にくらべたら何百倍もくっきりと見えている。逆を言えば、ほかの動物たちがこの世界を同じように見ていると思ったら大間違い。

「動物のほとんどが見ている世界は私たちが見る世界よりもぼやけているようです」と話すのは米デューク大学のポスドク研究員、エレノア・ケイブス氏。それを再現した画像が上記のものだ。

ヒト(画面左上)、ネコ、金魚、ネズミ(左下)、ハエ、蚊…と移っていくとともに視界がぼやけていく。蚊に至ってはほとんど見えていないといっていいぐらいだ。

ケイブス氏の研究チームはおよそ600種の昆虫類、鳥類、ほ乳類、魚類の眼球の構造を調べ、空間周波数を割り出すことで視覚の鋭敏さを測った。簡単にいえば、黒と白の平行線を視角1度あたりに何本識別できるかを「cycle per degree」という単位で測定する。人間は60本の線を識別できて、それ以上緻密な線はぼやけて見えてしまうそうだ。

そうして割り出された空間周波数の数値を、眼球の大きさと対比して表したのが以下のグラフだ。

Credit: Caves et al. via Trends in Ecology & Evolution

ご覧のとおり人間はかなり上部にランク付けされている。唯一人間よりもハッキリと世界を見ているのは猛禽類で、最高で140、すなわち人間の倍以上も鋭敏な視覚を持っているそうだ。これはタカやワシの習性を考えれば当然のことで、数百メートル上空を滑空しながら地上の獲物を狙うには鋭敏な視覚が必須だ。

反対に空間周波数が10以下では人間の場合法定盲人と見なされるそうだが、魚類や鳥類、昆虫類の圧倒的多数がこの領域に入っている。つまり、小動物のペットのほとんどは人間のスタンダードからすると「見えていない」ことになる。

ゾウのように目が大きいからといって、必ずしも鋭敏な視覚の持ち主ではないというのも興味深い。

さらにおもしろいことがある。この視覚の鋭敏さの度合いを巧みに使って、特定の動物だけに見える「秘密のサイン」を送っている生物もいるかもしれないというのだ。例えば、クモ。クモは自分の巣に白い糸でギザギザの模様を編み込むことで知られるが、何のためかは議論の余地があった。

Credit: Caves et al. via Trends in Ecology & Evolution

これはそのクモの巣のギザギザ模様を異なる生物の視点から捉えた想像図だ。左端のぼやけてほとんど見えていない目の持ち主はハエ。クモの恰好の標的だ。対してよりクリアに白いギザギザ模様を捉えている右側の生物たちは、チョウ、トンボ、フィンチ、ハトなど、およそ大きすぎてこのクモの巣を破ってしまいかねない招かざる客たちだ。

クモは白いギザギザ模様を自分の巣に編み込むことにより、自分の巣を壊しかねない大きな翼を持った生物たちに「キケン!近寄るな」のサインを送っている。ところがギザギザはハエにはまったく見えていないため、エサをおびき寄せるのになんの支障もきたさないのではないか?

これはあくまで仮説であって、クモやアトリやハエにはどのように「秘密のサイン」が見えているかが完全にわかったわけではない。ケイブス氏によれば、目が捉えた視覚情報が脳内でどのように処理されているかがわからないかぎり、動物たちがどのようにこの世界を見ているかわからないという。もしかしたら脳内に特殊な情報処理メカニズムが隠されていて、空間周波数が示すよりもずっと鋭敏にこの世界をとらえている生物がいるかもしれない。

とりあえず言えるのは、動物には人間と同じようにこの世界が見えていないということ。ペットのハムスターがエサを落としてしまっても、大目にみてやってほしい。

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