【追跡!日本の妖怪】神か妖怪か?天狗伝説を追う 前編

前回、私は古来より語り継がれて来た伝説の怪蛇「ツチノコ」について調査を行った。

そして今回新たに調査するターゲットとして選んだ妖怪が「天狗」である!

おそらく単純な知名度でいえば、ツチノコ以上にメジャーな存在であろう。日本人で天狗の名を知らない人はほぼいないはずだ。

だが、天狗といえば、具体的にどんな存在であるのか、はっきりと説明できる人はどれほどいるだろうか?

そもそも天狗は「妖怪」なのかどうかも含めて、はっきりとしたことは分からないと私は思った。

天狗を祀った神社などは珍しくなく、妖怪というよりも神様のようなイメージを抱いている人も多いのではないか。

「妖怪」の定義に関しては多くの考えがあり、こういうものが妖怪なのだと一言で説明するのは難しい。

ただ、水木しげる著のものをはじめ、多くの妖怪図鑑や、妖怪が登場するアニメや映画でも、天狗は妖怪の一種として扱われていることが多い。ここは天狗も妖怪の一種であると考えて、私は調査を行うことを決めた。

5月上旬、向かったのは京都――鞍馬山である。

この鞍馬山には、日本各地に存在する天狗の「総元締め」と伝えられる大天狗がいたという。

鞍馬駅を降りると、すぐに巨大な天狗の頭が出迎えてくれる。

天狗の持つ最大の特徴は大きな鼻だが、この巨大な天狗像の鼻は2017年に大雪の影響で、根っこから折れてしまうという事件も起きた。(今では無事修復されている)

巨大な天狗像の存在感にしばし圧倒された後は、鞍馬山のほうへと足を進める。

鞍馬山は、山自体が信仰の対象となっているため、山の入口には大きな門が立っている。ここで「愛山費」を300円を払うことで、山に入ることが許される。

普通こういう場合は「拝観料」を払うという印象が強かったのだが、この「愛山費」というネーミングは、後に強く納得させられることになるので後述させていただく。

魔王乃滝と呼ばれる滝。

参道を歩いていて、まず気になったのが「魔王乃滝」であった。ファンタジー系の漫画やゲームなどではよく目にする単語であるが、日本の神社仏閣で「魔王」の字を目にするのは珍しい気がする。

そして、更に参道を進んだ私の視界には巨大な御神木(大杉)が飛び込んでくる。

これまで多くの神社仏閣で御神木を目にしてきたが、存在感の大きさはトップクラスに入ると思う。

御神木である大杉。

御神木の皮を使ってお守りも作られており、ご利益がありそうだ。

更に先に進むと、まるで現代アートのような奇妙な像が視界に入る。

看板に目をやると、この像は「宇宙生命・宇宙エネルギー・宇宙の真理」を具象化したものだと説明されている。

宇宙生命・宇宙エネルギー・宇宙の真理を表した像。

宇宙の像というのは「魔王」以上に新鮮な驚きを感じた。

そして、私はある1つの仮説を思い浮かべたのだった。

今回、私は天狗調査のためにやって来た。この天狗について、1部のオカルト関係者はある説を唱えていたのである。

空から人型の神秘的な存在が降り立ったという神話や伝説は世界中に存在している。それらは古代に、宇宙から異星人が降り立ったという証拠なのではないかという考えがあるのである。

UFO研究家の中には、日本の天狗も宇宙人であると主張している者も少なくないのだ。

オカルトを扱った番組やイベントに出演する機会も多い私は、実際に天狗=宇宙人説を主張する人たちとも何度も会ってきた。

天狗伝説の伝わる鞍馬山に、宇宙の像が置かれているのを目にして、私は彼らの唱えていた説を思い出したのである。

ひょっとすると、本当に天狗は宇宙人だったのか?

鞍馬天狗の姿を思わせる護法魔王尊。一説では金星から来たとされる。

宇宙を具象化した像を見た十数分後に本殿で天狗の像を目にすると、天狗の背中に宇宙的な神秘も感じてしまうのであった。

とにかく鞍馬山は神秘的なものや、多くの神社仏閣を見てきた人間にとっても新鮮な驚きを抱かせるもののオンパレードであり、気が付けばあっという間に時も過ぎていってしまう。

鞍馬山の植物や歴史関連の展示が行われている霊宝殿。

多くの自然も残されており(鞍馬山の植物や動物などの貴重な資料を展示している博物館も山内にある)、ここを訪れる人々は山そのものを敬い、慈しんでいることが伝わってきた。

宮崎駿監督の映画『となりのトトロ』や『もののけ姫』の舞台のようでもあり、妖精のような存在が潜んでいてもおかしくない気持ちにさせられる。

山に入る際に支払ったのが「愛山費」であるのも、納得である。

しかし、ある意味、情報過多と言ってもいいくらいに、神秘と不思議のオンパレードである鞍馬山を見て回ったことで、私は天狗の正体からはむしろ遠ざかってしまったような印象も抱いてしまった。

一体、天狗とは何なのか?

神様なのか、魔王なのか、妖怪なのか、それとも宇宙人なのか……。

天狗の正体を探るため、私は天狗についての興味深い論文を書かれたある人物と会うことにした。

後編に続く