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昨晩見た夢を忘れないために、今日から実践できること

私たちは人生の三分の一を睡眠に費やしている。そして睡眠中にいろんな夢を見ているのにも関わらず、目が覚めるとなにひとつ覚えていないことが多い。眠りから覚めて夢の断片がかろうじてどこかにひっかかっていたとしても、すぐにきれいさっぱり忘れて洗い流されてしまうのはなぜだろうか?

夢と睡眠障害の専門家であった米タフツ大学の故アーネスト・ハートマン教授によると、夢は一種の精神機能と考えられ、大脳皮質の活動を伴う。しかしその性質はほかの思考とは大きく異なり、集中思考がひとつの極みだとすれば、その対極に夢、空想、夢想といった思考がある。夢や空想は思考のなかでも最もクリエイティブで「ぶっ飛んだ」アイディアが詰まっているという。

夢を覚えていられたら、もしかして生活の中で役立つのでは?と思ったあなたに、夢を覚えておくために今日から実践できることをいくつかご紹介しよう。

夢を忘れないコツ①寝る前に水を飲む

ハーバード大学のロバート・スティックゴールド教授がニューヨークタイムズに語ったところによると、夢を覚えておきたければ寝る前に水を3杯飲むといいそうだ。ビールやワインはレム睡眠を妨げるためおすすめできない。

寝る前に大量の水を飲むと夜中に尿意をもよおしてどうしても起きてしまうのだが、これが教授の意図するところ。じつは夜中によく目が覚めてしまう人ほど、夢を覚えていられるそうなのだ。

2017年にフランスで行われたある研究では、ほとんど毎晩夢を覚えていると答えた18人と、ほとんど夢を見ないと答えた18人の睡眠パターンを比較した。その結果、夢を覚えている人は夜中によく目が覚めてしまっていた。さらに、一度起きてしまったら平均2分以上も覚醒した状態が続いていたという。

2分以上、というのが次のポイントだ。

 

夢を忘れないコツ②ゆっくり目覚める

眠りに落ちる時、脳は一気に活動を停止するわけではない。部分的にほかより早く休止状態になったり、ずいぶん遅くまで活動していたりするそうだ。Live Scienceによると、最後まで活動しているのは海馬だという。海馬は蓄えられていた短期的な記憶を長期記憶に移す役割を果たしている部分だ。

海馬が遅くまで寝ないということは、遅くまで起きないということでもある。すなわち朝あなたが目覚めた時、あなたの海馬はまだ活動していない可能性が高い。その時差、約2分。海馬がまだ眠っている間に夢を記憶しようとしてもできないのはこの時差のせいだと話すのは、オーストラリアのモナッシュ大学所属のトーマス・アンドリロン教授だ。

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このような脳のメカニズムを知ったうえで、既出のスティックゴールド教授のアドバイスは眠りから覚めたら目を開けず、動かず、しゃべらず、とにかく少しでも長く夢の余韻に浸っていること。

「すっごい夢みちゃったんだけど!」と思わず話し始めたとたんに夢の記憶がふっとんでしまうことも多いそうだ。まずは覚えていることを頭の中でリプレイしてみて、海馬が機能するようになるまでしっかり夢を放さないでおくことが重要だ。リプレイしている過程で夢のディテールがさらによみがえってくるかもしれない。徐々に思考がクリアになってきてからノートに書き込んでおくのも手だ。

ちなみになぜ海馬がなかなか眠らないかというと、じつは睡眠中にその日1日分の短期記憶を長期記憶の貯蔵庫である大脳皮質に転送しているためだといわれている。これまでの研究で、海馬から大脳皮質への情報の動きは確認されたものの、海馬に入っていく情報の動きは認められなかったそうだ。記憶の書き換えに忙しい海馬は、睡眠中は新しい記憶を受けつけられないのかもしれない。

 

夢を忘れないコツ③自己暗示

もうひとつ、スティックゴールド教授がおすすめするのが寝る前の自己暗示だ。「今日の夢はぜったいに忘れないぞ」と自分に3度言い聞かせてから眠りにつくといいそうだ。さらに、枕元に夢を書き留めておくためのノートとペンを添えておくとなお効果的らしい。

これは眠りにつく前に何を考えていたかによって、脳が睡眠中に処理する情報の優先順位を判断しているからだそうだ。寝る前に「夢を忘れない!」と固く心に誓うと、それだけ脳内やることリストに載る可能性が高くなるそうだ。

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自己暗示をかけてから寝て、目が覚めたらじっと動かずに夢の余韻に浸る。海馬が目覚めてきたら、すぐさま夢の内容をノートに書き込む。

これを2週間続ければ、いままで夢を見なかった(というよりは見たけれど完全に忘れていた)人も、8割ぐらいは夢を覚えていられるようになるそうだ。

睡眠中の脳については、まだ解明されていないことも多い。

例えばLive Scienceによると、脳が眠りにつくとアセチルコリンとノルアドレナリンという2種類の神経伝達物質の分泌が極端に低下する。しかし眠りの中で一番鮮やかな夢を見るレム睡眠時には、奇妙なことにアセチルコリンのみが起床時と同レベルまで上昇するそうだ。このふたつの物質のバランスが夢の記憶を消してしまう原因かもしれないものの、詳しい仕組みはまだわかっていない。

また、「明晰夢」と呼ばれる現象も科学的な実験でその存在が実証されている。夢のなかで明晰な意識と意志をもって夢をコントロールすることができる人も世の中にはいるそうだが、あまり科学研究の対象にはならないそうだ。

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