イングランドのニューカッスル大学が3Dプリンタと「バイオ・インク」で人間の角膜を再現することに成功した。上手く研究が進めば角膜の問題に悩む人々の助けになるかもしれない。
不足する移植角膜
角膜は目のピントを合わせるのに重要な役割を持つ組織だ。しかしEurekAlartによれば世界で1000万人の人がトラコーマなどの目の感染症などで角膜移植を必要としている。にもかかわらず角膜ドナーは足りていないのだ。そのため角膜として機能する人工角膜の登場が望まれていた。
今回使われた方法では、安価な3Dバイオプリンターを用い、角膜の形状となるよう同心円状に細胞を印刷、角膜が育つのを待った。ここで使われたのがバイオ・インクだ。このインクは、ドナー提供を受けた角膜の幹細胞、藻類の中などに存在するアルギン酸、コラーゲンからなる。このアルギン酸とコラーゲンが幹細胞を生かした状態にしつつ、形を保つのに十分な堅さでありながらも3Dプリンタのノズルから問題無く出せる柔らかさの素材を生成できたのだ。
実用化はまだ先
角膜が育つのを待たないといけないとは言え、実際に3Dプリントに掛かる時間は6分以下。これを移植に使えるようになれば、角膜移植を待つ多くの人の役に立つことだろう。
だがこれは現段階ではまだ概念実証研究の段階であり、研究を率いたチェ・コノンはこの人工角膜にはこれから様々なテストが行われ、実際に移植に使われるようになるまでには数年かかるとEurekAlertに語っている。
研究は5月30日にExperimental Eye Researchで発表されている。