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科学が伝承に迫る!DNA鑑定でインカ帝国のルーツを検証

天空の都市マチュピチュで有名なインカ帝国。クスコに首都を建立し、北は現在のコロンビア、南はアルゼンチンに至る広大な土地を「タワティンスユ(ケチャ語で4つの地域の意)」と呼んで統治し、南米最大の帝国を築き上げた。

それほどの栄華を極めたインカ族だが、そのルーツは謎に包まれたままだ。歴代の王のミイラや遺留品からヒントを得られたかもしれないが、スペイン人の侵略者にことごとく破壊されたか持ち去られてしまったという。インカの人々がもともと文字を持たなかったのも災いし、口頭で伝わる伝承のみが唯一残された手掛りだ。

そこで、科学の力を借りて伝承の真意を検証する試みが行われた。ペルーのサンマルティン・デ・ポレス大学の研究者たちが、現代に生きるインカの貴族階級の末裔たちのDNAを鑑定したところ、口頭伝承とおおまか一致していることがわかったそうだ。

Credit: Sandoval, S.R. et al. via Molecular Genetics and Genomics

インカにまつわる伝承は主にふたつある。最古の伝承によれば、インカの祖先はクスコから50キロ南にあるパカリタンプの洞窟から発祥した。もうひとつは神話的なもので、インカの祖先はチチカカ湖のほとりから太陽とともに生まれたという説だ。チチカカ湖はクスコから南東の方角に380キロ離れている。

これらふたつの異なる伝承はインカの祖先がクスコに首都を築くまでの道筋を示したもので、じつはつながっているとみるのが人類学者や歴史学者の一致した見解だった。

今回のDNA鑑定ではその見解が間違っていないことがわかった。研究ではクスコ在住でインカの支配階級の末裔の18名の頬の粘膜からDNAを採取し、お互いが父系の血縁関係にあるかどうか、そしてチチカカ湖とパカリタンプに住む人々との類似性を調べた。

結果、チチカカ湖ともパカリタンプとも類似性が認められた。インカの貴族たちはどちらの系譜も継いでいたことに矛盾はなく、むしろクスコに首都を建立するまでに至った経路をはっきりと示しているそうだ。どちらの伝承も正しく、それぞれ異なる時代を切り取っていたともいえる。

30代も遡って系譜を調べることの難しさに加えて、本当の父親は違ったりするなど、鑑定の正確性に影響する諸事情もあっただろうと研究者は推測している。今後はインカ帝国の11代目にして最後の皇帝、ワイナ・カパックの末裔のDNAを調べてさらに検証を重ねる予定だそうだ。

 

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