Credit : Hughs Lab / Penn State

生き残りをかけて環境に適応したゾンビキノコ…寄生されたアリの行動に変化

アリにとりつき行動をコントロールする恐怖の「ゾンビキノコ」。ペンシルベニア州立大学の研究で、このキノコは生き残るために環境に適応することが可能であることが判明した。

 

ゾンビキノコ

「ゾンビキノコ」という不気味な名前で知られるオフィオコルディケプス属の「Ophiocordyceps kimflemingiae」はオオアリ属のアリにしか寄生しない菌類だ。この菌類は宿主であるアリにとりつくと、圧力と酵素を使ってアリの外骨格内に入り、アリをコントロールする。

コントロールされたアリは、植物の茎を登らされ、葉脈を大顎で強力に咬みこませることで体を固定。菌は顎の固定を強化すると同時にアリの筋肉を溶かし、アリを殺す。そして菌は繁殖可能になるとアリの頭部から新胞子を出し、アリたちへ上から降り注ぐ。

しかしこのゾンビキノコ、熱帯地域ではアリに植物の葉を噛ませるが、温帯地域ではアリに小枝や木の皮を噛ませることが知られている。また、温帯地域ではゾンビキノコによって死亡したアリの90%が脚を小枝に巻き付けていた。

これは、熱帯地域では一年中常に葉が存在するが、温帯地域では葉が落ちてしまうため、温帯地域では葉ではなく小枝を噛むのだ。

 

環境に適応して生き延びたゾンビキノコ

現在ゾンビキノコはヨーロッパ以外の全ての大陸で確認されているが、化石としては4700万年前のものがドイツで見つかっている。この当時は北極から南極近くまで熱帯樹林が存在したため、当時のゾンビキノコに寄生されたアリは葉を噛んでいたと考えられる。

しかし、気候が寒くなり、熱帯地域が温帯地域へと変わると、秋になればまた葉が落ちてしまう。そうすれば感染したアリたちは地上で頭から胞子を飛ばすことになるが、これでは生き延びることは難しい…。

このことから、このゾンビキノコは元来葉を噛む特性を持っており、小枝を噛む特性は葉が落ちる温帯気候へと変わった環境変化に対応するために獲得したと考えられるのだ。温帯地域の寄生されたアリが脚を小枝に巻くのもより小枝を噛むだけでは十分ではなかったために、より落ちにくくするために行動が変わったと考えられる。

また、日本や北米でのゾンビキノコの例からは、この温帯特性への変化は異なる時代に異なる場所で独立して起こったと考えられる。また、DNAサンプルの調査からは、小枝を噛む行為と、脚を小枝に巻く行為もまたそれぞれ独立して環境に適応するために発達した行為だと言うことが判明している。

これらのゾンビキノコの環境への対応変化は、今から4000万年から2000万年前のあいだのどこかで起きたのではないかと研究者はしているが、より詳しく特定するためにはゾンビキノコに感染したアリの化石がもっとみつからなければ難しいとのことだ。この研究はジャーナルEvolutionで5月28日に発表されている。

願わくばこのキノコが環境変化に適応して人間に寄生する…なんて方向に進化を遂げないでもらいたいものだ。

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