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「あのー」「えーと」など言葉のフィラー、じつは適切な名詞を選び出すための時間稼ぎ…研究で判明

英語で「uh…」、「er…」、「um…」、日本語でも「あー」、「えー」、「うーんと…」。フィラーと呼ばれるこれらの言葉は意味を持たず、文章を途中で分断し、使っている本人も無意識の場合が多い。

会議やプレゼンでフィラーを連発されるとイライラしてしまうかもしれない。でもフィラーは世界中のどんな言語にも共通している、ある機能的な役割を担っていると知ったら、あなたは驚くだろうか。

「あのー」や「えっと」は名詞の前に来ることが多い。なぜなら、名詞のほうが文中でより計画的に使わなければならないため、言葉を選び出すのに思考する時間がかかるからだ。言葉を選ぶのに時間がかかれば、その分だけ次に発音される言葉が遅れる。その遅れている時間を気まずい沈黙や「えーっと……」が埋めるというわけだ。

「世界の言語には文法や文化的背景に幅広い多様性がみられる。しかし、その根底にある言葉を処理するプロセスには堅固な共通概念がある」と研究成果を発表した多国籍チームは書いている。その「堅固な共通概念」のひとつが名詞の前に話し方が遅くなる傾向だ。この沈黙やフィラーが名詞の前に現れる確率は動詞より60%高いという。

「動詞と違い、名詞は新しい情報が提示される時のみ使われる。その必要がなければ、代名詞によって表現されるか、名詞そのものが省かれるからだ」と研究チームは指摘している。今までの文脈になかった新しい情報を表現する際に、脳内で確認作業が行われるため文章に間が生まれてしまうのだ。

じつはこれは研究者の仮説を裏切る結果だった。今までの研究では名詞は動詞よりも速く処理されると考えられていた。実際、カードに描かれた絵を言葉で表現する実験などでは、動詞よりも名詞のほうが速いレスポンスタイムが記録されている。これは、むしろ動詞のほうが複雑で、文中のほかの要素によって過去形になったり未来形になったり変化するからだと考えられていた。

Credit: Seifart et al. via PNAS

今回の研究では名詞と動詞のふたつだけに焦点を当て、どちらのほうがより「脳内プランニング時間」を要するかを調べた。データの量は膨大で、世界各地から系統も文化も異なる9か国語が選ばれ、それらが自然に語られる音源の中からトータルで28万8,848語の音声分析がおこなわれた。

全体的にゆったりと発音されるアメリカ・インディアンのスー族のHoocak語(ウィネベゴ語とも)や、単語が極端に短い南アフリカのNllng語など、異なる特徴を持つ言語が分析された。その結果、どの言語にも共通して名詞の前に沈黙やフィラーが多く見られたそうだ。

Bora語の音声分析の一例。 Credit: Seifart et al. via PNAS

言葉を見つけ出す処理と文章を紡ぎ出す処理とは、脳内で別々の回路を使って処理されていることを踏まえると、仮説と結果のギャップも説明がつく。

また、これだけ多種多様な言語にも共通点が見られたことに研究者たちは大きな意義を感じている。言葉が話される速度は一定ではなく、人によって、シチュエーションによって、または言語や文化によっても変化するが、この変化が部分的にすべての言語に共通することがわかったからだ。

文末に話す速度が遅くなるのもすべての言語に共通するという。話す速度はすなわち思考速度の表れ。話し方の研究は、間接的に人が脳内でどのように言葉を理解し、処理しているかを写し出す恰好の鏡だ。

研究は5月14日付で米国科学アカデミー紀要にて発表された。

 

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