何故氷は滑る?これまでの通説を覆す分子レベルの構造が解明

氷の上が滑りやすい理由は、実は水分子の構造が理由だった。従来の「氷上が滑りやすい理由」説を覆す分子レベルの研究が発表された。

 

水ができるから滑るわけではない

アムステルダム大学の物理学者、ダニエル・ボン(Daniel Bonn)とマックス・プランク・ポリマー研究所分子分光学部門所長のミーシャ・ボン(Mischa Bonn)の兄弟ら科学者達の研究では、分子レベルで氷の滑りやすさを研究。5月9日のJournal of Chemical Physicsdescribingで発表されている。

しかしその前に、従来「氷が滑る理由」とされた説を紹介しておこう。

これまで氷が滑る理由は、氷は水よりも密度が低いため、融点は圧力が高いと下がるためとされてきた。氷の上を歩くと足の下にある氷には圧力が高く掛かるのでとけて水となり滑る、というわけだ。しかしLiveScienceに語るミーシャ・ボンは、「象がハイヒールを履いたとしても」これが可能になるほどの圧力は出すことができないという。もう一つの説は、摩擦により氷が溶けるというものだが、動かないように立っているだけでも滑っていくことからこれもどうも違うと言うことがうかがえる。

そもそも圧力であれ摩擦であれ、水ができることで滑るというの理に適っていないとダニエル・ボンもLiveScienceに語っている。確かに床に水をこぼしても氷のように滑るわけではない。ではなぜ、氷は滑るのか?

 

表情を転がる水分子

Credit: Y. Nagata / MPIP. via University of Amsterdam

ボン兄弟らは氷が滑る理由を分子レベルで調べた。

氷は通常水分子が他の3つの水分子とつながり整った結晶を形作ってできている。しかし、氷の表面の水分子はふたつの水分子としか繋がれない。このことが結晶表面の分子の繋がりを弱くしており、水分子が「転がって」、自由にお互いに引っ付いたり離れたりできる状態となっているのだ。

このため、氷の表面はまるでダンスフロアにベアリングボールがばらまかれている状態になっているというわけだ。しかしこのような「水分子の層」は、ただの「水の層」とはまた違う状態だ。これらの分子と滑りやすさは水の氷点をはるかに下回らないと存在しないものであり、分子が自由に表面を転がれる状態は「3次元的な液体と言うよりも2次元的なガス」に似ているとダニエル・ボンは語っている。

氷は温度が高い状態では逆に滑りづらくなり、いちばん滑りやすい状態は、アイススケートに最適な-7度だという。今度氷の上を歩くときには「水分子が氷の上をベアリングのボールのように転がっている…」と想像しながら滑って転ばないように注意して移動してみてはいかがだろう。心の準備にはなるかもしれない。