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タコは宇宙からやってきた?…新たな説に専門家反論

最近よく「タコは宇宙からきた!」という話が話題に上る。その元となったのはあるジャーナルに発表された論文だが、専門家にはこの論文に懐疑的な見方をする者もいる。

 

宇宙からやってきたタコ

問題の論文は33人の執筆者により書かれ、最近ピアレビューされたもの。Progress in Biophysics and Molecular Biologyで読むことができる。

5億4000年ほど前の地球に突如生物の多様性が爆発的に増えた「カンブリア爆発」が起きた。テーマがテーマであるので語弊の無いように書くと、これは「爆発」とついているものの実際に隕石が爆発する現象などではなく、「爆発的に」多様性が増えたからそう呼ばれているものだ。

論文ではこれは地球外からやってきたウイルスが隕石と共に地球に衝突した結果だという「パンスペルミア説」をレトロウイルス科で説明しようとしている。レトロウイルスはRNA型のウイルスであり、宿主の細胞のDNAに組み込まれて増殖するものだ。これにより宿主となった生物が高度に進化したとしている。

その例としてこの論文が注目しているのは「知的複雑性」を持った頭足類のタコの存在で、もしかしたらこれが隕石についた凍った卵で地球にやってきた可能性があるとしているのだ。

 

証拠無き推論

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しかしLiveScienceではこれらの説の方が面白いものの、根拠無く論じるこの論文を信じるわけにはいかないと反論している。

論文では、複雑な神経とカメラのような目、カモフラージュ可能な機能を持ったタコの仲間は、系図に同様の前例がない中で突然進化したなどとしている。著者はこれをして、この様な機能が「進化の面で遠く離れた未来」からやってきたもの、すなわち地球外に起源を持つものだというのだ。

ポートランド州立大学のウイルス学者で生物学教授のケン・ステッドマンは、この論文の主張の多くは推論を通り越しており、文献もきちんと読んですらおらず「非生産的」だとLiveScienceに語っている。

ステッドマン博士によれば、タコのゲノム解析は2015年に行われており、神経系の遺伝子はカンブリア爆発のずっと後である僅か1億3500万年にイカから別れたものであると判明している。

また、レトロウイルスに関しても、宿主が非常に限定的であるように進化してきていることも指摘されている。もし地球に住む生物を宿主として、そのDNAに組み込まれるようなレトロウイルスが地球外からやってきたとすれば、そのやってくる元となった場所にも地球上にいる生物とほぼ同じ生物がいるべきだというのだ。

癌研究に対して授与されるマイエンブルク賞も受賞しているドイツの著名なウイルス学者でレトロウイルス専門のカリン・モリング(Karin Mölling)博士も、この研究に対しては地球に対しての宇宙の影響を考えるには役立つが、証拠が全くないため真面目に受け取ることはできないなどとしている。

そもそもの「カンブリア爆発」も、現在の我々の想像する太古の昔の様子も、生物の多様性も、今現在まで痕跡が残っていることがその証拠となっている。そのため、カンブリア爆発以前に存在したかもしれない生物多様性はそれらが残っていない可能性も、単純に未だ発見されていない可能性もある。今回の論文に関しても何らかの決定的な証拠が出てくれば専門家らの見方も変わるだろうが、それまでは眉に唾をつけてから考えるべき論だろう。

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