地球を覆う海の面積の割り合いはじつに70%。陸地よりもはるかに広く、そして深い。「海の深さの平均はおよそ4,000メートル」と話すのはシンガポール国立大学のピーター・ウン教授。そして深海にはまだまだ謎がたくさん残されているそうだ。

その謎のひとつにインドネシアのジャワ島南西沖に広がる深い海がある。今までほとんど調査されてこなかったこの未知の海域で、今年の3月から4月にかけてシンガポールとインドネシアの共同チームが新種の海洋生物を次々と発見した。

調査船はジャカルタ港を出発し、スンダ海峡を渡ってジャワ島の南側へ。そこからプラブハン・ラトゥとチラチャップの海岸線に沿って東に進み、たった14日間の航海中に1万2,000以上の底生種を回収した。
800種以上に分類され、海綿・クラゲ・海洋軟体動物・ヒトデ・ウニ・蠕虫類・カニ・エビ・魚などが含まれた。今まで誰も見たことのなかった新種は12種に上る。この海域の生物多様性を如実に物語る結果となり、2020年までに詳細な報告書がまとめられる予定だ。

『SJADES 2018』と名づけられたチームにはシンガポール国立大学とインドネシア科学院の研究者総勢31名が参加。先述のピーター・ウン教授と、インドネシアのドウィ・リスティオ・ラハユ博士がリードした。
シンガポールとインドネシアの国交樹立50周年目を記念して、より深く、より多様な関係性を築き上げる意味合いも含んでいたそうだ。

素晴らしい発見の裏には数多くのトラブルも……。出航日をかすめた台風の影響で、船出とともに荒波に見舞われメンバーの大半が船酔いに苦しんだ。
さらに、既存の地図がまちがいだらけだったため、海の深さを性格に把握できずにトロール網が海底に引っかかり、なんども破れてしまったそうだ。破れるたびに夜な夜な網を繕う苦労は相当だっただろう。
そんな努力も報われ、未知の海底からはこんな生物たちが発見された。




漁業、天然ガス、石油やメタンハイドレード、鉱物資源など、深海に新たな資源を見出す企業が多い中、これらの資源を搾取しすぎないために調査が不可欠だとシンガポール国立大学のウン教授は語る。鍵となるのは海洋生物の生態系をより詳しく知り、どこまで採っても悪影響を及ぼさないかのリミットを探ることだ。
「ロブスターや魚を捕まえて儲けたいがために、うっかり捕りすぎて絶滅させてしまった…なんてことはもうだめだ。『うっかり』はもはや許されない」。