Credit : Thomas M. Onuferko via ZooKeys

食糧を横取りする「泥棒蜂」が新たに15種発見される…その恐ろしい生態

カナダ・ヨーク大学の研究者が新種のハチを一挙に15種も発表し、学会の注目を集めている。

トーマス・オヌフェルコ氏(生物学)が学術誌ZooKeysに寄稿した185ページにも及ぶ壮大なスケールの論文は、北アメリカ大陸(メキシコ以北)に棲息する希少なムカシハナバチヤドリ属 (Epeolus)のハチ全43種の生態や特徴を図鑑さながら詳細に記述し、その中にはこれまで新種と認識されていなかった15種が含まれた。

研究の広さと深さにも目を見張るものがあるが、それ以外にもオヌフェルコ氏の研究にはおもしろい特徴が三つある。

ムカシハナバチヤドリ属が労働寄生蜂であり、その新種の多くは野外ではなく博物館で発見されたこと、そしてハチが教えてくれる環境保護の大切さだ。

Credit: Thomas M. Onuferko via ZooKeys

泥棒蜂

「労働寄生蜂」であるムカシハナバチヤドリ属の習性は恐ろしい。ほかのハチの巣にこっそりと忍び込んで卵を産みつけ、孵った幼虫は宿主であるハチの幼虫を殺して蓄えられていた食糧を横取りする。カッコウ類の托卵とも似ているため、「カッコウ蜂」とも呼ばれる。エサの横取りは人間社会では盗みに相当するので、「盗寄生性蜂」とも…。

いずれも不名誉なムカシハナバチヤドリ属がターゲットするのがムカシハナバチ属(Colletes)。単独で巣作りするハチなので、寄生されやすい。

ムカシハナバチヤドリ属も同じく単独で行動し、巣作りをしないので、屋外では見つけにくいそうだ。5.5~10ミリという小ささも新種の発見を妨げる原因となってきた。

オヌフェルコ氏がヨーク大学に語ったところによると、アメリカやカナダといった身近で研究しつくされたフィールドにおいても、ムカシハナバチヤドリ属はなかなか発見しにくい。加えてひとつひとつの種が非常に似通っており、外見だけでは見分けられない新種もいくつかいるそうだ。オヌフェルコ氏はDNA検査という強力な手法を使って、アメリカとカナダの昆虫博物館が所蔵しているムカシハナバチヤドリ属の標本を片っ端から調べた。

標本から新種

今回新種と認定された15種は、博物館の標本箱に入れられて発見されるのを待っていたものもあれば、以前から知られてはいたが、正確に分類されていなかったものも含まれた。何千時間もハチたちと向き合ってきたであろうオヌフェルコ氏は、素人目では到底区別をつけにくいような微細な特徴を見出して新種に分類していった。

 

Credit: Thomas M. Onuferko via ZooKeys

15種のうち、1965年にリチャード・ブラムリー氏が修士論文にて記述していたものの、学術誌に発表されることがなかったため非公式のままだった6種も含まれた。そのうちの一匹にはブラムリー氏を讃えて『Epeolus brumleyi』という学名がつけられている。

ほかの新種にもオヌフェルコ氏の妻の名前をとって『Epeolus tessieris』、論文を指導してくれた教官の名前にちなんで『Epeolus packeri』、同僚、兄弟、父親……などなど、オヌフェルコ氏の愛情が込められたネーミングだ。

オヌフェルコ氏の妻の名前にちなんだ『Epeolus tessieris』― Credit: Thomas M. Onuferko via ZooKeys

身近な環境保護の大切さ

都市化が進んだ北アメリカでもこれだけの新種が見つかることに驚くが、オヌフェルコ氏によればまだまだ発見の余地があるそうだ。BBCに語ったところによると、ハチは知られているだけで2万種にものぼる。これは鳥類と哺乳類を合わせたよりも多い数だ。

身近な環境にも新種のハチが潜んでいる可能性とともに、その環境を保護していく重要性をこの研究は改めて喚起している。ハチは環境の変化に敏感な生物とされ、「炭鉱のカナリア」的な役割を果たしているという。ハチの中でも極めて稀なムカシハナバチヤドリ属の生態を知ることは、環境の健康度を知ることにもつながる。

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