Credit : U.S. Army

耳を失った米軍人、腕で培養した耳を移植

左耳を失った軍人が、自らの腕で耳を培養させ、それを失われた耳部分に移植する手術がアメリカ陸軍で成功した。

 

失われた耳

2年前、当時19歳だった軍人のシャミカ・バレイジ(Shamika Burrage)はテキサスで自動車事故にあった。

助手席に妊娠したいとこを乗せて車を運転していたところ、タイヤがパンク、車が横転した。いとこは軽い怪我で済んだが、バレイジ自身は救出があと30分遅ければ出血死するほどの大けがを負った。

バレイジは幸いにも事故を生き延びることができたが、その代わりに左耳を完全に失ってしまった。

 

腕で培養された耳

米陸軍の発表によれば、ウィリアム・ボーモント陸軍病院では、バレイジの腕で耳を培養してそれを移植するという手術が行われ、無事成功した。

これは、培養した胸郭の軟骨組織を削り耳の形を作り、それをバレイジの右腕の皮膚の下に入れ、そこで数ヶ月大きくなるのを待ち、これを移植するというもの。

なおこのような方法の手術がアメリカ陸軍で行われるのは初めてだが、胸郭の軟骨から耳を作り、皮下に入れることで立体的な耳を作るという方法は1920年代から存在する。だが当時確立された方法は、今回のように体のべつ部分で培養した耳は用いず、耳の後ろに軟骨を入れこみ耳を形作り、それが患者の組織と一体化した後に、切り込みを入れて耳を「立ち上がらせ」、新たにできた耳の裏側部分を皮膚移植により補うというものだ。

今回の手術では、「遊離皮弁」(microvascular free tissue transfer)という血管を縫合する方法も用いられている。これは、移植用に作られた組織の血管を、移植の部位の血管に繋げるというもので、今回の場合で言えば腕で新たに作られた耳の血管を、本来耳があるべき部分に移植する際にその周囲の血管と縫合するというものだ。

腕での耳の培養では、新たな血管が形作られる新生血管形成が行いやすいという。こうして出来た耳には血管も神経もあり、移植後にはちゃんと元の耳のように感覚があるという。

 

元通りの耳へ

Credit: Creative Commons

だがこれらは全て耳の形状に関することであるというのも頭に留めておこう。もしも事故によりバレイジの左耳の聴覚機能が完全に失われていた場合は、このような移植も純粋に形成外科的な処置に過ぎない。

幸いなことにバレイジの左耳の聴覚は失われていなかった。事故の影響で外耳道が塞がってはいたものの、手術によりこれを開くことで聴覚は戻った。これに元の耳の形が加わることで、事故前と変わらない耳の見た目と機能が戻るのだ。しかしバレイジの耳の再建手術はまだこれで終わったわけではなく、後2度の手術を行う必要がある。しかしこうすることで、「5年後には誰も気づかなくなる」ほど自然な耳を作ることができると形成再建外科医チーフのオーウェン・ジョンソン3世(Owen Johnson III)は語っている。

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