ハエトリグモの高度なジャンプの研究…将来はロボット技術に役立つか

科学者たちが蜘蛛にジャンプさせてそれを研究している。自分の体の6倍もの距離を飛ぶことのできるハエトリグモを調べその構造を理解することで、人間の作るロボットにも役立てたい考えだ。

 

キム・ザ・ハエトリグモ

マンチェスター大学によるこの実験で用いられたのは、ハエトリグモ科のPhidippus regius。研究には当初4匹の蜘蛛が用意されたが、そのうち飛ぶことを嫌がらなかったのは1匹のみ。この蜘蛛はキムと名付けられた。

実験に協力的な体調15mmの雌のハエトリグモ、キムは、様々な距離や高さのプラットフォーム間を飛ぶことになった。その様子はウルトラハイスピードカメラで撮影されたほか、マイクロCTスキャンにより蜘蛛の脚や体の構造の3Dモデルも作成されている。

 

キムの高度なジャンプ

研究でキムは、距離としては自分の体の6倍、高低差は自分の体の2倍分まで飛べることを示した。なお、参考までに人間はどれだけ上手く飛んでも自分の体の1.5倍の距離しか飛ぶことができない。キムは、ジャンプするときには自分の体重の5倍の力を使って飛び出すことも判明。ジャンプ前には糸をプラットフォームに取り付けてから飛んでいることも確認されており、これは滞空中の安定にも関連しているかもしれない。

またジャンプの際にキムはは距離に応じてジャンプ方法を変えていることも判明した。ハエトリグモは特に蜘蛛の中でも視力が良く、また獲物を捕らえる際にジャンプすることもあり、ジャンプに関しては高度な知性を持つと考えられる。

蜘蛛の中には自らが敵から逃げるためにジャンプをする種の中にはより遠くまでジャンプできるものもいる。だが、キムは体の構造から考えられるジャンプ性能を最大限に活用したジャンプは今回の研究では見せていない。キムは長距離ジャンプではより大雑把なジャンプをすることも判明しており、これらのことからは、遠くを見るには適していない目の作りなどから、長距離のジャンプ計算は苦手であり、逆に、獲物を捕らえる際に行うような距離が短く高速なジャンプが得意だとされる。

蜘蛛は脚の筋肉とは別に、体液を利用し水圧で脚を伸ばすことができることは50年前から判明していたが、これまで蜘蛛はジャンプをする際にこの力を用いているか謎であった。今回の研究では、キムの脚の筋力はジャンプに十分な力があると見積もられており、水圧を用いることは不可欠ではないとされる。その一方で、筋肉と水圧両方を用いてジャンプしている可能性も排除しきれない。

 

研究の将来

しかしどれだけ蜘蛛のジャンプを研究しても、蜘蛛と同じ大きさのジャンプロボットを作るにはまだまだ乗り越えなければならない課題が多そうだ。素材は適したものがあっても、この小ささで作るのは難しいし、ロボットとしてはその電源や制御の面でもまだまだ自然の造り上げた生き物には追いつけない。

今後はジャンプに使われるのが筋肉と水圧両方なのかどうかを判断するためにも、ジャンプ中の圧力測定を行ったり、ハエトリグモのジャンプ制御戦略を調べたりし、最終的にはハエトリグモと同スケールのジャンプ機能を持ったロボットを作りたいとしている。今回の研究はScientific Reportsに5月8日に掲載されている。