これまで調査されたことのなかったバミューダ島付近の海が、オックスフォード大学の研究者らと海洋探索チャリティーNektonにより調べられた。するとこの地域にはこれまで思われていた以上に生物の多様性が見いだされ、100種以上の新生物が発見された。
Nektonミッション1
実地調査は実に2年前の2016年7月から8月にかけて行われた「Nektonミッション1」からもの。このミッションではダイバーたちが海面下90mまでを、潜水艦が300mまでを調査。累計潜水時間400時間以上をかけて、4万のサンプルと1万5000トンの水を採取、240のビデオクリップを撮影、238平方kmの海底をマッピングした。
その後データ分析などが行われ、これまでにこのミッションから発表された論文は20に上る。
数々の新発見
このミッションでは新たに新種の生物が100以上発見された。そのなかには珊瑚、藻類、甲殻類タナイス目、などの新種が含まれる。既存の種の中でも、今回初めてバミューダ付近に生息することが判明したものなどもあり、この地域の生態系の歴史についても新たな視点がもたらされることとなった。
興味深い発見の一つは、ミノカサゴに関するものだ。主に浅瀬に生息するとされてきたミノカサゴが初めて304m地点で確認されている。ミノカサゴはもともとインド洋や太平洋に生息しており、大西洋西部には人の手によりもたらされて急速に増え、珊瑚や原生魚を食べる事で被害をもたらす。
各国政府はミノカサゴによる被害を減らすためにコントロールプログラムなどを行おうとしているが、ミノカサゴは浅瀬に生息するとされているためそのようなプログラムも浅瀬に限定される。今回深海でミノカサゴが発見されたことで、このようなコントロールプログラムも考え直す必要があることが指摘されている。
新たなゾーン
また、今回の調査では最近になって新たに設定された海のゾーンを確証することにもなった。
これまで海の深さによって住まう生物群が異なることから、海面下0~40mを「高光ゾーン」(Altiphotic Zone)、40~130mを「中光ゾーン」(Mesophotic Zone)、200m~3000mを「漸深海ゾーン」(Bathyal Zone)と区分けされてきた。
しかし最近になって130m~300mの地点が「希光ゾーン」(Rariphotic Zone)として新たに設定され、例えば今年3月にはスミソニアンなどがカリブ海の希光ゾーンを調査し、新種の魚を多く発見している。
生息する生物群の違いから比較的新たに設定されることになった希光ゾーンを含め調査した今回、「深海の浅い部分」とも言うことのできるこのゾーンには確かに独自の生物多様性が確認された。今後も希光ゾーンを調べることで、更なる発見があるだろう。
なお今年から2021年にかけてはインド洋にてNektonミッション2が行われる。こちらは 希光ゾーンの下に存在する漸深海ゾーンを調査する予定となっている。