ワニはバッハの旋律がお好き?クラシックを聞かせると脳が活性化

バッハ、嫌いじゃない…。

ナイルワニにクラシック音楽を聞かせながら磁気共鳴機能画像法(fMRI)で脳を観測した結果、単純な音を聞いている時より活性化されることがわかった。

ナイルワニの脳が音楽を処理するパターンは鳥や哺乳類とよく似ているそうだ。脊椎動物の進化において、その初期段階ですでに感覚刺激を処理するパターンが確立されていたと考えられる。脳がどのように進化したかを知る上で重要な手がかりとなりそうだ。

 

2億年前の脳の姿

脳の進化を調べようと思っても、脳は化石として残らない分なかなか難しい。そこで研究者が目をつけたのが、2億年前からほぼ変わらない姿をしているナイルワニ。脊椎動物の中ではもっとも古い種で、恐竜と鳥類とを結びつけるリンクだ。ドイツ・ルール大学ボーフムのフェリックス・ストローケンズ教授によれば、「ワニの脳を調べれば、進化の過程で脊椎動物の神経系がどのように発達して、どの機能がいつ頃備わったかを知ることができる」そうだ。

そこでストローケンズ教授含む6名の勇敢な科学者たちは、5匹のナイルワニの幼体をfMRI装置に入れて様々な音、音楽、光の点滅などを提示しながら脳の活動を観測した。

Ruhr-Universität Bochum, Marquard

 

おりこうなワニたち

とはいえ、ナイルワニのような変温動物をfMRIで測定したのは世界初の試み。そもそもfMRI自体がワニの体を想定して作られていないので、調整は難航したという。

一番の苦労は温度調整だったそうだ。fMRIで正確に測定するには被写体の体内温度を一定に保つ必要があるのだが、ワニは変温動物なので自分の体温を維持できない。測定中のfMRIの放熱も相殺できるよう、まわりの温度を一定に保つ工夫を余儀なくされた。

さらに、ワニを扱うという根本的な危険性もあったのだが…。

「幸いなことに、ワニたちはけっこうfMRIが気に入ったみたいで、ぜんぜん暴れなかったんだ」とストローケンズ教授はGizmodoに語っている。「ワニが怒って暴れてしまったら研究機材も、もしかしたら我々自身もダメージを被ったかもしれないので細心の注意が必要だった。ワニたちは1才とはいえ、強いアゴとしっぽを持っているからね。でもすべてうまくいって、私たちもワニたちも全員無事だった。」

fMRIに入れられる際、ワニは鎮静剤を投薬され、念には念を押してアゴのまわりをテープでしっかりと固定されたそうだ。

 

嫌いじゃない

ガッチリ固定されたうえで、ワニがfMRIの中で聞かされたのはヨハン・セバスティアン・バッハ作曲の『ブランデンブルク協奏曲』だった。

ワニたちにとってバッハの音楽は心地よかったのだろうか。抵抗もせずおとなしく音楽を聴いていたワニの脳内では、鳥やほかの動物同様の脳内処理が行われていたことが判明した。

さらに今回の研究は変温動物でもfMRI測定が可能であることを示した。「技術的ブレークスルー」だとストローケンズ教授は語っている。今回の成功を踏まえ、今後クラシック音楽を聞かされながらfMRIで脳を測定される動物が格段に増えそうだ。