Credit : Grand Auctions

切り裂きジャックが書いたとされる手紙、競売にかけられる

「切り裂きジャック」が書いたとされる手紙がイギリスで競売にかけられることになった。1888年8月から11月の間にロンドンのイーストエンドで5人の売春婦が惨殺され、未だにその正体が不明なこの事件。これにまつわる真偽が不明な手紙は多くあり、この手紙もまた犯人が記したものかは不明だが、犯人を臭わせる非常に興味深い手紙が今月末競売にかけられる。

 

切り裂きジャックを生んだ手紙

だが切り裂きジャックを「切り裂きジャック」たらしめたのは、今回競売にかけられる手紙ではない。正体不明の犯人に「切り裂きジャック」という名を与えることとなったのは、セントラル・ニュース・エージェンシー(Central News Agency)という新聞社に9月27日に届いた手紙だ。

その手紙は「親愛なるボスへ」(Dear Boss)という出だしで始まり、「切り裂きジャック」(Jack the Ripper)の署名が記されており、そこからこの犯人にこの通り名が与えられたのだ。しかし、この手紙は当時厳しい競争に晒されていたセントラル・ニュース・エージェンシーの創作したものではないかとされている。

今年2月には法医言語学者がこの時期に警察や新聞社に送られた手紙209通を調べ、そのうち数通に言語学的な共通点を見いだしている(Nini, DSH, 2018)。それによれば「親愛なるボスへ」の手紙と、その数日後に同新聞社に届いた「Saucy Jacky」(Saucyは「性的な示唆」や「生意気」といった意味、Jackyはジャックの愛称)と書かれた葉書は同一人物のものであることが判明したほか、ジャーナリストであるトーマス・ブリング(Thomas Bulling)がスコットランド・ヤードに届けた別の2通の手紙とも共通点が見つかった。後者はブリング自身が書いたものではないかと推測されており、もしかしたら「切り裂きジャック」の名を定着させることとなった「親愛なるボスへ」の手紙もこの人物の手によるものである可能性が高まった。

このほかにも切り裂きジャックを騙る人物により書かれた手紙は200通以上存在する。では今回競売にかけられる手紙はどれだけ意味があるものなのだろうか?

 

俺は切り裂きジャックだ

Credit: Public Domain

この葉書はイーリング警察署に1888年10月29日に届いたもので、葉書の最後には「俺は切り裂きジャックだ」(I am Jack the Ripper)と記されている。しかしこの葉書には興味深い要素が沢山含まれている。

手紙には「気をつけろ、俺は二人の女が欲しい、そいつらはろくでなしで、そいつらもいただくつもりだ、俺のナイフはまだしっかりしている、これは学生ナイフだ、腎臓の半分を気に入ったといいが。俺は切り裂きジャックだ。」などと書かれている。「学生ナイフ」(students knife)との記述があるが、被害者たちの切り刻まれ方からは犯人が医学生であった可能性もあり、それに一致する点も興味深いが、切り裂きジャックの最後の被害者とされるメアリー・ジェーン・ケリーが殺されたのは、この手紙が届いた11日後である11月9日であることも忘れてはならない。

そして何よりも「腎臓の半分を気に入ったといいが」(I hope you liked the half of kidney)と書かれている点は、その後ホワイトチャペル警戒委員会会長のジョージ・ラスク(George Lusk)宛てに届けられた手紙を連想させずにはいられない。「地獄より」(From Hell)という出だしで始まるそちらの手紙は、人間の腎臓半分と共に届けられたとされ、手紙には「もう半分は揚げて食べた、とても良かった」などと記されているのだ。

とは言えこれが実際に事件の犯人により書かれた手紙かどうか、その真相は謎のままだ。しかし謎のままであるからこそ切り裂きジャックは今も人々の興味関心を惹きつけるのかもしれない。

この「俺は切り裂きジャックだ」の手紙はその後イーリング警察で1960年代まで証拠品として保管されていたもの。今回イギリスのGrand Auctionsにて4月30日に競売にかけられることとなったが、切り裂きジャック関連の品で警察の証拠品であったものが競売にかけられるのはこれが初とされる。予想落札価格は最大1000ポンド、日本円で約15万円ほどと見積もられている。

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