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市部の大気汚染が原因か、赤ちゃんにアルツハイマーの初期兆候

大気汚染の激しい地域で、1歳未満の子供にアルツハイマー病の兆候が見られた。この研究は大気汚染とアルツハイマー病の直接的な関連性を証明するものではないが、遺伝子によってもその影響が変わることが判明したほか、他の研究では貧困地域の大気汚染度の高さや、社会的ストレス要因が大気汚染からの影響を大きくすることも指摘されている。

 

生後11ヶ月にアルツハイマー病の兆候

ResearchGateに今年3月に掲載された研究では、メキシコシティーに住む生後11ヶ月から40歳までの203人の検死を行っている。そこでは高リン酸化タウと、アミロイドβというふたつのタンパク質が調べられた。これは、高リン酸化したタウ・タンパク質が神経原線維変化を引き起こすことが、アミロイドβはプラークを形成することが、アルツハイマー病の特徴となっているからだ。

その結果、対象となった遺体の99.5%からこのふたつのタンパク質が脳内に多く見られた。11ヶ月の子供からもこのアルツハイマー病の初期兆候が見られたのだ。

 

原因は大気汚染か

アメリカ合衆国環境保護庁の基準値を超える微粒子物質(PM2.5)やオゾンへの暴露によりアルツハイマー病のリスクが高くなるとされる。メキシコシティーの都市圏に住む住民たちはこの基準を超える大気汚染に晒されて生活している。このような大気汚染の微粒子が肺に入ると、肺から血中に、そして脳へと運ばれる他、体が微粒子に対し免疫反応を起こすことでも神経系に影響が生じるなどとされる。

だが大雑把に大気汚染、PM2.5などと言っても、実際にアルツハイマー病のリスクとなっている微粒子は一体どの大きさの、どんな物質であるのか、また、それにどれだけ暴露されたら危険となるのかは今後の研究が必要だ。

今回の研究は大気汚染が直接脳への害の原因であることを証明するものではない。しかしこのような大気汚染とアルツハイマー病の関連性を示唆する研究はすでに多く存在する。例えば微粒物質PM2.5として肺から脳まで到達する大きさの磁鉄鉱はものを燃焼させることなどで作られ、都市部に多く見られる。磁鉄鉱は脳内で悪影響を与える活性酸素の生成との関連があるとされ、活性酸素が多く作られることはアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患との因果関係があるとされている(Maher. et al. PNAS, 2016)。

 

アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子

今回の研究では、APOE4という遺伝子を持っている者の場合、同年齢で同程度のPM2.5が蓄積されているこの遺伝子を持っていない者と比べ、神経原線維変化や、自殺率が高いことも判明している。APOE4は、「遅発性アルツハイマー病発症における最も強力な遺伝的リスク因子」(Nature 549, doi: 10.1038)であり、アメリカ人の13~20%がこの遺伝子を持っているという。

遺伝要因を変えることは難しい。しかし、大気汚染がアルツハイマー病のリスクを高めているのであれば、大気汚染を改善するための取り組みをしていくことで、アルツハイマー病のリスクを下げる事ができるはずだ。

 

大気汚染と貧困地区

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Popular Scienceは米国では人種・民族的に少数派である子供達が通う学校は大気汚染度が高い地域にあることや、世界的に収入が低い地域は大気汚染度が高いことも指摘、貧しい地区に住む子供はより大気汚染からの影響を受けやすいとしている。これは貧しい食生活や差別などの社会的ストレス要因が、大気汚染などの環境的ストレス要因と加わり神経的、認知的な発達に更なる影響を与えるためである(Clougherty, et al. ehp, 2009)。

大気汚染を減らすための取り組みを進めると同時に、貧困問題についても取り組む必要があるだろう。また将来の研究でアルツハイマー病に直接関与している物質が特定されることも期待したい。

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