獣医学的な手術か、はたまた呪術か?3000年前のウシの頭蓋骨に四角い穴

およそ紀元前3400年~3000年の遺跡から出土したウシの頭蓋骨に、穿頭術(trepanation)特有の大きな穴が見つかった。ウシを救うために手術をほどこしたとすれば、動物に行われた人類最古の外科手術となる。もしくは人間に手術をほどこすために練習していた可能性もある。どちらにしても、新石器時代にはすでに穿頭術がかなり横行していたことがうかがえる貴重な標本だ。

ウシの骨が見つかったのはフランスのシャンデュランにある新石器時代遺跡。1975年から1985年にかけて大規模な発掘調査が行われ、大量のブタ、ヤギ、ヒツジなどの動物の骨に混ざって頭の右前部分に大きな穴が開いたウシの骨も見つかった。穴は上の写真のとおりタテ6センチ、ヨコ5センチのいびつな正四角形。当時の調査結果をまとめた考古学者たちは、別のウシの角で突かれた跡だと結論づけていた。

しかしSeekerによれば、ずっと後になってからそのウシの写真をたまたまインターネットで見つけたフランスの人類学者兼医師、アラン・フロマン博士がこの結論に疑問を抱いたそうだ。医師としての直感が働いたのかもしれない。詳しく再調査するために、フランス国立科学研究センターの同僚であるフェルナンド・ラミレス=ロッズィ氏と協力してウシの骨の精工な3Dモデルを作成し、あらゆる角度から穴の謎に迫った。

ふたりが出した結論は穿頭術。右前頭葉の骨を削る、もしくは切り落として頭蓋骨に穴をあける「手術」だ。

穿頭術自体は中石器時代から始まり、新石器時代にはさらに広まったと考えられている。どのような目的で穴が開けられたかは定かでないが、宗教的・スピリチュアル的な信仰から、またはなにかの機能障害を治療のためだったと推測されている。世界中でこの施術の例が見られるため、それぞれ文化ごとに異なった理由があったのかもしれない。どんな理由があったにせよ、おぞましい手術だ…。

Credit: Fernando Ramirez Rozzi

問題のウシの頭蓋骨に開けられた穴は外側よりも内側の内径が小さくなっており、ギザギザな切り口だったため石器で削られたと考えられるそうだ。もしライバルのウシの角に突かれてできた穴だとしたら、そのインパクトにより穴のまわりも砕けたりヒビが入ったりしたと推測されるものの、そのような痕跡はみられなかったという。

なお、穴の周りの骨の細胞が癒えた様子が見られなかったことから、この手術はウシの死体を使って行われたか、もしくはウシを救うために行われた手術だったとしたら、残念ながらウシを助けられなかったと見られている。