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もし地球上に人類よりはるか昔に産業文明が興っていたとしたら?大胆な「シルリア紀の仮説」とは

もし人類以外の文明が見つかって、それが地球外生命体じゃなかったとしたら面白くないか?

そんな大胆な質問を投げかけて科学界に驚きの波紋を広げているのはNASAゴダード宇宙科学研究所の所長、ギャビン・シュミット氏だ。

シュミット所長はロチェスター大学のアダム・フランク教授(天文学)とタグを組み、斬新な「シルリア紀の仮説」を打ち立てた。彼らの論理的な出発点はこうだ。

もし人類が繁栄するよりはるか昔にも地球上に別の産業文明が繁栄し、やがて滅び去っていたとしたら、その痕跡を私たちは見つけられるだろうか?ここでは「産業文明」とは、地球規模のエネルギー源を利用する能力を持つ文明と定義されている。

 

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SETI研究所をはじめ、地球以外の太陽系の惑星、または太陽系外惑星に地球外生命体を探す取り組みは盛んだ。しかしシュミット氏とフランク氏の知る限りでは、今まで人類以外の地球生命体がいた可能性を真面目に調査した論文はいないという。そんな学術的な穴を埋めるため、そして人類が地球にもたらしている甚大なインパクトを改めて考察するために、ふたりで論文を書き上げたそうだ。

人類以外の地球生命体が残した痕跡とはどんなものか。不謹慎な話かもしれないが、それを考えるためにはまず人類の痕跡がどのようなものになるのかを考えなければいけない。我々ホモ・サピエンスは370万年前にこの地球上に現れたとされている。その間に産業革命が起こり、都市化が進み、大量のモノを生産し、地球上の石油、天然ガス、シェールガス、最近ではメタンハイドレートを燃やしてきた。

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しかし人類の歴史は地球の歴史の時間枠で考えるとあっけないほど短く、地形学的な痕跡はほとんど残らない。人類絶滅後、まず都市や交通インフラなどの建造物は数百年で崩れ去り、100万年も経てば跡形もなく消えてしまうだろう。人間の骨が化石化する確率も非常に限られており、人類の全貌を解き明かすほどのスケールの出土は考えにくい。現に人間よりはるかに長い間地球に繁栄していた恐竜のうち、数千体のみが完全な化石として出土している。

次に、人類が残す地質学的な痕跡を考える時こんなパラドックスに行きつく。シュミット氏とフランク氏いわく、文明が長く存続すればするほどその文明は持続可能な農業、製造業やエネルギーの使い方を心得ている。持続可能な文明ほどエコロジカルフットプリントが小さくなる。しかし、エコロジカルフットプリントが小さいほど地質学的な痕跡は少なくなるのだ。ということは、文明の地質学的な痕跡は自己限定的にならざるを得ない。

結果、人類が生きた地質学的な痕跡はたったの数センチにしか及ばず、後世から見たらあっという間に終わった時代にしか見えない。

 

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ではその数センチにはどんな情報が含まれるだろうか。シュミット氏らによれば、二酸化炭素の大量放出、酸素欠乏性の海、土壌の浸食による堆積物の増加などが見て取れるという。さらには核実験などによる放射性物質、プラスチックなどの自然にはない化合物が文明の存在を明かす決め手となるかもしれない。

じつは地球に刻まれた長い歴史には、すでに上記とよく似た地質がいくつか発見されているそうなのだ。これらにもし放射性物質やプラスチックの痕跡が認められたとしたら…。その可能性に魅了されたあまりに、シュミット氏は古代の地層から有機化合物が発見されたという架空の設定で短編小説まで書いてMotherboardに寄稿している。

とはいえ、シュミット氏もフランク氏も「シルリア紀の仮説」を信じているわけでなく、人類以前に栄えた産業文明の存在には否定的。この仮説を通じて、宇宙生物学的な観点から人類が築き上げてきた産業文明を振り返り、また地球外生命体の探索方法について新しい論点を提起したいようだ。

 

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地球だけでなく、おとなりの火星にもかつては大量の水が存在していた痕跡が見つかっている。金星もかつて太陽の力がまだ弱かった時はハビタブルゾーンに位置していたという。火星や金星の地質をボーリング調査したら、産業文明の痕跡が見つかる可能性も否定できない。

シルリア紀の仮説は、今後人間以外の生命体を探すうえでより柔軟な思考を促しそうだ。

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