ナイフの腕を持つ男…抗生物質も無い時代に腕を切断されながらも生き延びた不思議

失った腕の代わりにナイフ付きの義肢を持った1万5000年前の男の死体が調査された。抗生物質の無い時代、腕を切断されてからも傷が癒え、50歳近くまで生きたことが判明したが、この男が一体どんな人生を送ったのかは謎のままだ。

 

ナイフの腕を持つ男

この男はある時右腕を切断された。何が腕切断の原因かははっきりとは判らない。刑罰によるものである可能性もあるが、もしそうであれば彼はその後適切な治療を受けられない可能性が大きいとみられるので、戦いもしくは医療処置により腕が切断されたとみられている。

腕は一撃で切り落とされたようであるが、彼は出血死することもなく、抗生物質のないこの時代に感染症で死ぬこともなく、腕の傷は癒え、その後50代近くまで生きたようだ。このような怪我が命取りとなる抗生物質のない時代に生き残れたのは、きっと周りの人々が彼の命を大切に思い治療、看病してくれたからだと考えられる。

失った腕の代わりには、共に埋葬されていたレザーストラップによりナイフが取り付けられた義肢を使用していたようである。男の上の切歯(せっし、前の4本の歯)のひとつがその周囲の歯に比べてかなりすり減っていたことから、男はこの歯をレザーストラップを留めるのに用いていたのではないかと考えられている。

 

埋葬もユニーク

髄膜炎で腕を失った女性が義肢のナイフでケーキを切る様子- Credit: Getty Images

これはイタリア北部のネクロポリスで発見された164の墓地に眠っていた222体の遺骨のひとつで、発掘されたのは20年前のこと。しかしこの男についての詳しい調査が行われたのは最近のことで、Journal of Anthropological Sciencesの最新号である96号に掲載されている。なおこの場所には他にも2匹のグレイハウンドと、生け贄とされる頭のない馬も埋葬されていた。

他の埋葬されていた男たちは武器と共に埋められ、腕はまっすぐに伸ばしてある状態であった。しかしこのネクロポリスに埋葬されていた他の遺体とナイフの腕を持つ男の違いとしては、右腕を胸の前に置くように曲げてあったことだ。そして本来ならば右腕の先があるべき位置には、レザーストラップにブロンズのバックルに長い鉄製のナイフがついている義肢が置かれていたのだ。

この時代では死を覚悟するような大けがを負いながら50歳近くまで生き、他の大勢とは違う埋葬方法で葬られたこの男。一体彼は何故腕を失い、ナイフの義肢と共にどんな生活を送っていたのだろうか。