Credit : ESA / Hubble & NASA / Acknowledgment: Judy Schmidt

光の屈折が織りなす宇宙の壮大な幻影、「アインシュタイン・リング」

2018年4月6日にハッブル宇宙望遠鏡が捉えたこちらの画像。中心のひときわ明るい天体のまわりを、赤みがかった円弧が部分的に取り巻いている。

この赤い弧は「アインシュタイン・リング」。宇宙のかなたから届いた壮大なスケールの幻影だ。

千載一遇のチャンス

ハッブルが画像の中心に捉えているのはSDSS J0146-0929と呼ばれる銀河クラスター。このまばゆい輝きの中に、じつは数百の銀河が驚異的な重力によってぎっしりと詰め込まれている。

SDSS J0146-0929のまわりを円形にとりかこむ赤い物体も、じつはれっきとした銀河だ。この赤い銀河は地球から見るとSDSS J0146-0929のちょうど真後ろにある。つまり、地球と、SDSS J0146-0929と、赤い銀河は一本の線上に位置しているということになる。

さて、赤い銀河から放たれた光がSDSS J0146-0929を通過するとどうなるだろう。SDSS J0146-0929の強大な重力は時空を歪めている。SDSS J0146-0929が歪めた時空を通過する光はその歪みに沿って屈折し、まっすぐには進めない。このように、赤い銀河が放った光はまっすぐには進まず、地球に到達するまでに複数のルートに散らばるため、地球からは円状に散らばって見える。この現象は「重力レンズ」とも呼ばれる。

屈折した光が織りなすこの壮大なイリュージョンは、地球と、光源と、時空を大きく歪めるほど強大な重力を持った天体がピッタリと線上に並ばなければ成り立たない。ZME Scienceいわく、「宝くじの一等賞を当てるより稀」だそうだ。

アインシュタインの予測に反して

アインシュタインが1915年に発表した相対性理論は宇宙の姿を塗り替えた。時空は重力によって自在に歪められる、いわばトランポリンの表面のようだと再定義されたのだ。重たい天体は重たいぶんだけ時空に歪みをもたらし、そこを通過していく光を屈折させる。

この光の屈折を初めて数学的に定義したアインシュタインだが、しかしこの現象を人間の目で見ることは不可能だとも予測を立てていた。偉大なアインシュタインの予測に反して、人類は今、ハッブル宇宙望遠鏡という強力な装置を手に入れてアインシュタインの貴重なリングを目の当たりにしている。

ESA / Hubble & NASA

ハッブルの魅力

ハッブルはこれまでにも数々のアインシュタイン・リングの姿を捉えてきている。2011年に撮られた上の画像は「馬蹄型アインシュタイン・リング」。U字型に歪んだ青い銀河をよく見ると、星のかたまりが帯状に引き伸ばされている様子がわかる。

NASA / ESA

そしてこちらは2015年に同じくハッブルが捉えた「笑うアインシュタイン・リング」。たしかに複数の銀河が宇宙最大の絵文字を形成している。

ここからはハッブル豆知識だが、NASAによればハッブル宇宙望遠鏡は1990年4月24日にアメリカのスペースシャトル、ディスカバリー号に打ち上げられて以来、高度およそ547 kmの低周回軌道を保ちながら膨大なデータを地球に送り続けている。今までの観測回数はおよそ130万回。送られてきたデータを元に書き上げられた科学論文は1万5,000本を超える。その精度はアメリカの首都から東京の夜空に飛ぶホタルをくっきりと捉えるほどだそうだ。

Hubble snaps amazing photo of Einstein Ring phenomenon (ZME Science)

Extremely rare double Einstein ring imaged by Hubble (ZME Science)

Hubble Finds an Einstein Ring (NASA)

This Single Image Profoundly Sums Up Einstein’s Landmark Theory (Gizmodo)

About the Hubble Space Telescope (NASA)

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