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食虫植物とイネが決め手…大気中から効率よく水分を集める素材研究

空気中から水を効率的に取り出すのは難しいものだ。だが食虫植物やイネの葉っぱにインスパイアされたアメリカの研究では、従来の12から120倍もの水を集めることのできるテクスチャーを作る事ができた。 

霧を集める

「仙人のように霞を食う」なんて言うが、まさに何も無いように見える空気中から水を効率的に集める技術今注目を集めている。このような技術は「フォグ・ハーベスティング」(fog harvesting 霧収穫)と呼ばれ、降雨の少ない地域で真水を得るためなどに用いられる。そうすることで、雨の少ない地域でも、わざわざその地域に水を搬送することなく、水を大気中から得て農業に使用するなどが可能なのだ。

フォグ・ハーベスティングに用いられる仕組みとしては、「フォグ・フェンス」(fog fence)と呼ばれる布などを屋外に張り、それに水が結露し張り付くものを集める方法が用いられている。しかし、フォグ・ハーベスティングに用いられる従来の素材では一日に1平方mで1~10Lしか集めることができなかった。 

食虫植物とイネと

Science Advancesで3月30日に発表されたペンシルバニア州立大学とテキサス大学ダラス校の研究では、このフォグ・ハーベスティングをより効率的に可能にするテクスチャーが研究されている。

親水性(hydrophilic)の高いテクスチャーであれば、大気中の水分をうまく捕まえる事ができる。しかしただ親水性の高い表面であれば、水分はそこにひっついたままとなり、水を効率的に集める事はできない。つまり、親水性の高いテクスチャーを使用したフォグ・フェンスには、その表面に水が集まるものの、それがなかなか落ちてこないのだ。

この問題を解消するために研究者たちが参考にしたのが、落とし穴式の食虫植物(例えばウツボカズラ科)のツルツルとした葉と、一つの方向にのみ水滴が流れやすいイネの葉っぱ(rice leaf)の構造だ。この二つの構造を模すことで、表面に集まった水がツルリと特定の方向に流れていき、水を効率的に集め、収集する事が出来るというわけだ。

ツルツルして荒い表面SRS

こうしてできたテクスチャーはSRS(Slippery Rough Surface 滑性粗表面)と呼ばれ、SLIPS(slippery liquid-infused porous surface 滑性液体注入多孔質表面)や、超疎水性表面(Superhydrophobic Surface)などよりも効率よく水を集めることができた。動画では左が今回のSRS、中央がSLIPS、右が超疎水性表面のテクスチャーとなっている。

このSRSテクスチャーを用いることで、想定では一日に1平方mで120リットルの水を集めることも可能だという。ペンシルバニア州立大学機械工学助教で今回の研究に関わったタク=シン・ウォン(Tak-Sing Wong)がZME Scienceに語ったところによれば、SRSはアルミニウムなどの金属を含む様々な素材の表面に適応することができるという。

今後研究チームは様々な環境状態でこのテクスチャーを実験し、効率的に、そして経済的に空気から水を集める方法を探ることで、世界の水問題を解決していきたいという。

Bioinspired surface harvests water from thin air(ZME Science)

Hydrophilic directional slippery rough surfaces for water harvesting(Science Advances)

1.3 Fog harvesting(OAS)

Development of Functional Slippery Liquid-Infused Porous Surfaces via Layer-by-Layer Method(慶應義塾大学)

New Slick Method May Improve Water Harvesting(YouTube – ZME Science)

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