犯人は婚約者か? 捜査難航の殺人事件の意外な真犯人とは

殺人事件は多くの人間を深く傷つける。ある日突然家族を失い、身内でさえも警察に疑われ、多くの人が「姿の見えぬ殺人者」に恐怖を抱く。しかし何よりも辛いのは、例え犯人が発見され逮捕されたとしても、殺された人は絶対に帰ってこないという事実だ。

アメリカウィスコンシン州にある小さな町ウォーソーで起きた悲劇も、住人たちを恐怖に陥れた。ブレアンナ・シュネラーは18歳と若かったが、彼女は未来に胸を躍らせていた。21歳の恋人、エドゥアルド・ミランから結婚を申し込まれていたのだ。ブレアンナは彼と2人でレストランを持つことも夢見ていた。

そんな純粋な夢は突如絶たれることになる。2009年5月2日、ブレアンナは恋人と一緒に暮らしていたアパートで死体となって発見されたのだ。遺体の胸には無数の刺し傷があり、さらに喉をかき切られるという凄惨な状態だった。

小さな町で起きた残酷な殺人事件に、ウォーソー警察はただちに捜査を開始した。凶器はブレアンナの足元にあったアイロンと、浴室に落ちていた2本のキッチンナイフ。現場には大量の紙幣が散乱しており、強盗事件である可能性は低かった。

警察が最初に疑わしいと思った人物は2人。恋人のエドゥアルドと、彼の弟であり死体の第一発見者でもある同居人カルロス・ミランだ。婚約者とのケンカか? 兄弟と彼女との三角関係がもつれたのか?
警察はあらゆる可能性を模索した。

現場検証を進めると、その場にあったアイロンで衝動的に犯行に及んだことや、性的暴行のあとが発見されなかったことから、偶発的な犯行であったことが推察された。遺体の顔にはタオルがかけられており、被害者の顔を直視したくなかったのだとすれば、やはり身内の犯行が疑われる。

殺人事件がなかなか解決を見ず、ウォーソーの町は不安に包まれる。凶悪犯が野放しになっているのだから当然だ。街ではさまざまな憶測が飛び交っていた。警察はあらゆる角度からミラン兄弟の犯行の可能性を探ったが、新たな証拠は発見されなかった。

しかし、事件は思わぬ方向から進展を見せる。事件現場から見つからなかったブレアンナの携帯電話が、ミラン兄弟が働いているレストラン付近のゴミ捨て場から発見されたのだ。携帯電話が入っていた袋には、種類の異なる手袋が片方ずつと、女性ものの下着が2枚。そして手袋には血液が付着していた。

捜査の焦点はミラン兄弟の働くレストランに絞られた。ここで従業員たちの出勤時間を正確に把握するのに役立ったのが“監視カメラ”だ。レストランに設置されていたカメラの映像から、ミラン兄弟の潔白が立証される。ブレアンナが生存していた時間帯には、2人とも職場に到着していることが確認されたのだ。では犯人は誰なのか? 続いて血濡れの手袋のDNA鑑定が行われた。

懸命な捜査は続き、従業員のデータから23歳の調理師ハビエル・フェルナンドに疑惑が浮上。彼はブレアンナが住むアパートの近くに住んでおり、出勤時間も死亡推定時刻の後だった。しかしフェルナンドは事件への関与を否定し、その日は同僚のラウル・ロッカに職場まで車で送ってもらったことを証言した。ロッカは他の従業員を車で迎えにいくことが仕事の1つだった。

もう一度監視カメラを検証すると、不自然な点が発見される。ロッカは店を出るときには茶色のトレーナーを着ていたはずが、35分後に戻ってくると調理用の白い服を着ていたのだ。犯行時に付着した血液を隠すために着替える必要があったのか? また警察は、ロッカがフェルナンドを迎えに行く所要時間にも着目。通常10分で終わるはずの送り迎えに35分もの時間を費やしていており、明らかに不自然だったからだ。

そしてロッカの家を捜索すると手袋のもう片方が見つかり、DNA鑑定も一致。ブレアンナの爪からもDNAが検出され、事件は一気に進展した。ロッカは犯行を否定したが、彼の自宅からポルノ雑誌と女性用の下着が見つかったことから、下着を盗もうとして家に侵入しブレアンナと鉢合わせたことが犯行の動機と推定された。これらの証拠から、ロッカは2011年1月13日、第一級殺人罪で執行猶予なしの終身刑を言い渡された。

凶悪な事件が解決しても関係者の気持ちは晴れず、残された人々は悲しみに暮れる。人生が一変してしまったブレアンナの父クレイグは、娘の死を無駄にしないためにブレアンナの名前をつけた記念財団を設立。明るく心優しい娘だったことを人々に覚えていてもらいたい、ただその思いだけだった。ウォーソーの町には平和が戻ったが、事件の傷跡は消えることなく残り続ける。 

『狙われた隣人』はディスカバリーチャンネルにてご視聴頂けます。ディスカバリーチャンネルを未視聴の方は、こちらからご確認ください。

RELATED POST