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画期的な新説が指の関節を鳴らす音の正体を解明

バキッ、ボキッ。関節を鳴らすとなぜ大きな音が出るのか不思議に思ったことはないだろうか。

科学者も同様に首をかしげてきた。そしてこのたび、70年以上続いてきた研究の成果がやっと実を結びそうだという。フランスのエコール・ポリテクニークの論文によれば、中手指節関節(いわゆる第三関節)を満たしている液体に生じる気泡がはじけるとこの音が出るらしい。しかも数学的な理論モデルを使って実証したというのだから、ちょっとややこしい。

バキッと一発、気合を入れて考えてみよう。

音の正体は泡?

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指の第三関節は中手骨(上の図では緑色)とその上の基節骨とをつなぐ部分で、動きをすべらかにする滑液で満たされている。指を鳴らすとき、まずはこのふたつの骨を極端にずらすことで関節間の隙間が広がり、滑液内の圧力が低下して気泡ができる。次の瞬間、骨がもとどおりの位置に納まろうすると隙間が縮小して気泡が圧縮される。

気泡がはじけて消えるときに「バキッ」というあの音が出る――と今までは考えられていた。しかし、エコール・ポリテクニークのバラカット教授と教え子のスージャ氏(現在スタンフォード大学の博士課程に在学中)は、気泡がつぶされて小さな泡に分解するだけでも充分に大きな音が出るという結論に至った。

じつはこれ、いままで有力とされてきたふたつの異なる説を見事に融合してしまった画期的な結論なのだ。 

両立しないふたつの有力説

指鳴らしの謎に迫る研究は70年前にさかのぼり、まじめな学術誌上で鳴る関節と鳴らない関節があること、そして一度鳴らした関節は20分ほど間を置かないと鳴らないことなどが報告されてきた。音の由来に関しては、骨と骨とのすばやい動作が振動となって細胞間を伝わる、または滑液を包んでいる関節包が急激に収縮して鳴るなど諸説あった。

1971年、アンスワースという学者が初めて気泡がはじけると音が出るのはないかと推測し、音の由来を突き止めたかのように見えた。ところが2015年にアルバータ大学のカウチャック医師が磁気共鳴映像法を使って指を鳴らす一連の動作を可視化した結果、指を鳴らした後も気泡が残っていると判明したのだ。

泡がはじけて音を鳴らすのなら、音が鳴ったあとに泡が残っているはずはない。カウチャック氏の映像はアンスワース氏の仮説を否定したかのように思われた。そしてカウチャック氏により「泡ができるときに音が鳴る」という新説が提唱された。 

見事に融合

しかし磁気共鳴映像法の難点はフレーム数が指鳴らしの素早い動作に追いつけないこと。リアルタイムに一連の動作を追うことは不可能なため、音が鳴る瞬間をとらえられない。

そこでエコール・ポリテクニークのバラカット教授らは数学モデルを使い、理論的に泡が音を鳴らしているのかを検証した。三つの数式でそれぞれ滑液にかかる圧力、滑液に生じる泡の大きさ、そして泡の大きさがどんな音を出すのかを表した。

すると、大きな泡に圧力がかかって小さな泡に分解するだけでも充分に「バキッ」といい音が鳴るらしいことがわかった。泡が分解して音を鳴らすのなら、音が鳴ったあとにも泡が残っているはず。カウチャック氏の映像とアンスワース氏の仮説を見事に融合した結果だ。

気泡だが、じつはどのようにできるのかがまだはっきりしていない。バラカット教授らの数式でも気泡の存在を前提としている。バキボキ鳴る音の正体を完全に突き止めるためには、今後さらに検証が必要だ。

Why Do Cracking Knuckles Make That Noise? You Might Need a Calculator (The New York Times)

A Mathematical Model for the Sounds Produced by Knuckle Cracking (Scientific Reports)

Why do knuckles crack? The answer might be in a mathematical equation (USA Today)

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