Credit : W. Leo Smith, Elizabeth Everman and Clara Richardson via ResearchGate

猛毒、しかも目の奥にサーベルを隠し持った最強の魚の正体

よく研究されているはずの魚に思わぬ新発見があった。猛毒を持つ魚が多いカサゴ目の魚は、目の奥に鋭いサーベルのようなとげを隠し持っていたのだ。「涙骨セイバー」と名付けられたこの特殊な骨の構造は敵から身を守るために進化したと推察されているが、まだまだ謎が多い。  

盲点

2003年に涙骨セイバーを偶然発見したのはW. レオ・スミス博士。Smithsonianによれば、スミス博士がオコゼの解剖をしていたところ、涙骨が上顎骨からなかなか外れずに大変な苦労をしたという。他の魚であればメスで簡単に切り外せるはずなのに、なぜか。 

スミス博士が調べてみると、涙骨のでっぱりが上顎骨についている小さな突起とギアのようにかみ合わさってロックされる仕組みになっていた。同時に、前方の脊柱が長いとげのように変形していることに初めて気づいたという。上顎骨が回転すると涙骨もギアのように連動し、普段は頬の側面にたたまれているその細長いとげが頬に対して垂直に立ち上がった状態で固定されることもわかった。形がセイバー(剣)に似ていることから、涙骨セイバーと命名された。

上顎骨と涙骨の突起 – Credit: W. Leo Smith, Elizabeth Everman and Clara Richardson via ResearchGate

原点

涙骨セイバーの発見を受け、魚類学者の多くはショックを隠せなかったという。こんなにあからさまな仕組みにもかかわらず、なぜ今まで見過ごされてきたのか?スミス博士自身がNew York Timesのインタビューに語った言葉どおり、「我々は魚についてまだなにも知らない」ことが露見した形だった。 

その後のスミス博士の研究により、涙骨セイバーはカサゴ目全般に共通する特徴だと判明。正確な機能については不明な点が多いが、敵に食べられにくくする防御機能や、性的ディスプレイに使われる可能性などが指摘されている。防御機能と考えられているわりにはオコゼをいくら驚かしてもなかなか涙骨セイバーを出してくれないので、科学者たちも頭をひねっているそうだ。

注意点

このように長年研究者たちの目をあざむいてきたカサゴ目の魚たちだが、魚の目をあざむくことに関しても天才的だ。ある種は背に海藻を生やし、またある種は海底の砂利そっくりに擬態して敵をはぐらかしたり獲物に近づいたりする。

わたしはどこでしょう? – Credit: Wikimedia Commons

あまりに素晴らしい擬態なので、時には誤って踏んづけられる不幸な事故も起こる。2018年2月にオーストラリア東部のセブンティーン・セブンティで休暇を楽しんでいたアイルランド出身のケヴェン・レンショーさんは、浅瀬でうっかりオニダルマオコゼと接触してしまい、素足に毒のとげが刺さった。猛毒に犯されたその壮絶な苦しみは、Gladstone Observerいわく、「足をハンマーで殴られて、その上からやすりでなんどもなんども傷をえぐられるような感覚」だったそうだ…。 

進展

フサカサゴ科にはオニダルマオコゼの他にもノコギリカサゴやミノカサゴを含み、猛毒を持っている魚が非常に多い。これらの魚の分類法については科学者の見解がまとまっていなかったのだが、涙骨セイバーの有無で新しい分類法が確立し、よりスッキリした系統発生解析が実現しそうだという。 

これらの発見はスミス博士が論文にまとめ、2018年3月号の学術誌『Copeia』に掲載されている。

Why Did a Venomous Fish Evolve a Glowing Eye Spike? (Smithsonian)

This venomous fish has a sharp spike coming behind its eye (Newsweek)

Venom Runs Thick in Fish Families, Researchers Learn (The New York Times)

Phylogeny and Taxonomy of Flatheads, Scorpionfishes, Sea Robins, and Stonefishes (Percomorpha: Scorpaeniformes) and the Evolution of the Lachrymal Saber (ResearchGate)

Irish luck runs out after stonefish sting (Gladstone Observer)

涙骨(Weblio辞書)

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