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お天気衛星だけじゃない、世界の気象観測の今

百葉箱だけじゃない最新地上気象観測テクノロジー

嵐の中を調査する「ハリケーン・ハンター」も…高層気象観測

天気予報に防災、気候変動予測に、気象観測データは様々に活用されている。しかし気象観測と一概に言っても、実際には様々な場所で様々な機器を用いて行われているのだ。今回は大まかに地上、海上、高層、そして宇宙からのものに分け、それぞれの最新事例をご紹介しよう。地上から気象を観測する装置も百葉箱から気象レーダーまで様々な物がある。気象レーダーのなかでも、現在カナダのドルバル気象所が今年7月から運用開始予定の最新レーダーは、従来の物よりも素早く気象観測スキャンが可能になっている。

これはマイクロ波のSバンドを用いたドップラーレーダーとも呼ばれるタイプのレーダーで、従来の物でスキャンに10分かかっていたところがこれであれば6分間で可能だという。この時間の短縮で警報を出すような気象状況をより早く把握出来る。特にトルネードなどは発生して消えるまでに10分もない場合もあり、この数分のスキャンにかかる時間差が命取りになりかねない。また、このほかにも雨、雪、雹、雨氷などを細かく正確に識別出来るほか、嵐の先まで認識出来る能力も持つ。

SHOUTミッションの準備を行うNASAグローバル・ホーク – Credit: NASA Photo / Lauren Hughes

南極船のデザインにも活用?海洋気象観測

各国で新技術の投入相次ぐ…宇宙からの気象観測

高層気象観測の世界では、気球を飛ばして情報を集めるものや、観測ロケットを飛ばすもの、飛行機による気象観測などが行われてきた。高層気象観測では例えば嵐の中もその観測対象となっており、嵐が発生しているときには嵐の中に飛行機ごと突っ込み、そこからドロップゾンデと呼ばれる投下式の気象観測機器を落としたりして情報を集めるという方法が昔から行われている。中でも有名なのは、1944年から存在し「ハリケーン・ハンター」の名で知られる米空軍の53d気象偵察飛行隊(53d Weather Reconnaissance Squadron)だ。しかし、それも近年は無人ドローンの出現で変化しつつある。

2014年からアメリカ海洋大気庁NOAAにより用いられている「コヨーテ」(Coyote)ドローンは、ハリケーン・ハンターの航空機の中から嵐に向かい滑空し、危険性のある気象状態の中で、人命を危険にさらすことなく、気温、気圧、風量などのデータを収集することを可能にした。現在これはまだハリケーン・ハンターの補助的な役割しか担っていないが、NOAAはこのほかにもNASAと共同で行う「SHOUT」というドローンを用いた無人の気象観測プロジェクトも行っている。これ未だプロトタイプ段階ではあるものの、NASAの無人ドローン、グローバル・ホーク(Global Hawk)を用いて海洋地域を長期、広範囲に標的観測することにより、ハリケーンや冬の嵐、洪水などの危機に関連した気象予測モデルをより正確なものとするというものだ。

海での気象観測も重要だ。古くは気象観測船により行われていた海での気象観測は、最近ではバッテリー式やソーラーパネルで駆動する気象観測ブイに取って代わられた。今年3月12日には、ニュージーランド国防軍が新たに南極海に気象観測ブイを設置している。このブイは、気圧や海面温度、波の高さなどのデータを集める事ができる。このような気象データ収集により、気候変動についてより詳しく調べ、予想を立てることを可能にするほか、データは南極で使用する船舶をデザインする際にも役立てられるという。

世界初の気象衛星TIROS – Credit: NASA

スマートフォンがこれまでの気象観測を変える?

1960年にアメリカが打ち上げた「TIROS」以来、様々な気象観測衛星が宇宙から地球を観測している。2014年には地上の二酸化炭素量を測定するという新たな手法による観測を可能にした軌道上炭素観測衛星OCO-2が打ち上げられたことも記憶に新しいが、宇宙からの気象観測においては毎年次々と新たなものが登場している。一番最近のものでは、去る3月1日にアトラスVロケットによって打ち上げられたアメリカ海洋大気庁NOAAの「GOES-S」(静止軌道運用環境衛星-S)も有名だろう。

これは極端紫外線/X線放射照度センサーEXIS、磁気センサ、太陽紫外線撮像装置SUVI、気象用高度撮像装置ABI、雷マッピング用装置GLMなどを備えたもの。GOES-Sは、すでに打ち上げられている次世代静止軌道気象衛星であるGOES-Rシリーズのひとつであり、他の同シリーズの衛星とネットワークを形成し、西アメリカから中央アメリカ、太平洋までを観測。稼働開始は2018年中を予定されており、稼働すればより早く正確に自然火災やサイクロン、嵐などのデータを収集するために役立てられる。欧州のESAも大気のモニタリング、気候変動やオゾンホールの形成などの観測を行う「Sentinel-5P」衛星を昨年末に打ち上げており、日本も昨年温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」や、雲・エアロゾルの放射を三次元的に観測できる「EarthCARE」などを昨年打ち上げた。

また、最近ではスマホをハブにして、一般人が集めた情報を元にした気象観測も注目を集めている。ユーザーが所有する携帯型の空気質指数測定機器の情報を集約し、世界各地の空気質指数情報をマップで提供するEnvi4Allなどのサービスもここ数年で登場した。またなんら特殊な機器がなくとも気象観測に関わることのできるものもある。NASAが支援するグローブ・オブザーバー(GLOBE Observer)プロジェクトだ。

このプロジェクトでは、ユーザーはスマートフォンアプリを通じて自らが撮影した雲の写真を送ることができる。こうして送られたデータは、NASAが保有する人工衛星から撮影した雲の写真など、膨大なデータと組み合わされ、世界中の研究者が活用できるデータとなるのだ。毎日眺める天気予報などからは、その裏にあるこうした技術の進化はなかなか伝わってこないが、気象観測の世界も刻々と進化しつつあるようだ。

Observation components of the Global Observing System(WMO)

Doppler radar to deliver swift weather warnings(The Suburban)

When Hurricane Hunters Are Replaced by Drones(The Atlantic)

SENSING HAZARDS WITH OPERATIONAL UNMANNED TECHNOLOGY(SHOUT)(NOAA)

New Zealand Defence Force launches data capturing buoy in Southern Ocean(Stuff)

GOES-S Now in Geosynchronous Transfer Orbit above Earth(NASA)GOES-R(NASA)

Nasa is interested in your pictures of clouds(Techradar)

衛星総覧(RESTEC)

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