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思いやりの心は遺伝するらしい…英大学研究

人の共感する能力の10%は遺伝する。こんな研究結果がイギリスのケンブリッジ大学から届いた。

主任研究者のヴァルン・ウォーリア氏率いる国際的な研究チームは、まず4万6,861人の参加者(うち男女比率はほぼ同じ)に共感指数(EQ)を計るテストを受けてもらい、80点満点で各自の共感能力を数値化した。

次に、参加者の唾液から遺伝子情報を取り出し、EQの違いがゲノムの違いとどのぐらい一致しているかを統計的に調べたそうだ。10%という結果は、人の共感能力の度合いがある程度遺伝子型によって決定されていることを意味している。

心のパターン

 学術誌「Translational Psychiatry」に発表されたウォーリア氏らの論文によれば、共感能力とはどのぐらい他人の考え、意図、要求や感情を読みとれて、それらに対して的確に対応できるかを示している。社会的な交流を深め、人間関係を築くうえで欠かせない重要な力だ。共感能力は人や一部の動物にも備わっていて、お互いを助け合いながら生存確率を上げるために進化の過程で獲得されたと考えられるそうだ。

今回の研究では共感能力と精神的疾患との関係も調べ、いくつか興味深い相関関係を発見している。共感能力が高い人のゲノムは、社交的な人のゲノムと関連しているそうだ。さらに、拒食症になりやすい因子を抱えている人のゲノムとも関連していたという。そして逆相関が発見されたのは共感能力と自閉症だった。 同じ研究では女性が男性よりも平均してEQ数値が高いことも実証された。さらに、女性においては年齢が上がれば上がるほどEQも高くなったという。

男女差

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共感する能力の男女差は以前から認められており、ある程度の生物学的な要素も含まれていると考えられてきた。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんでも女児のほうが男児よりも人の顔に興味を持つ傾向が確認されていることから、共感する能力――または共感したい欲求――には生まれながらにして男女に差があることがわかっていた。

ところが、今回の研究でも男女の共感能力の差を確認できたものの、遺伝子型の差は認められなかったそうだ。なぜ男性より女性の共感能力が高い傾向にあるのかはわからずじまいだったそうだが、もしかしたら妊娠、出産といった女性を取り巻く環境が、後天的に共感能力を発達させるのに適しているのかもしれない。あるいは、遺伝子型に差はなくても、その遺伝子の表現の仕方が男女によって違うのかもしれないとも考えられるそうだ。

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研究の課題点

では、共感能力を表現している遺伝子型はどこにあるのだろうか?残念ながら、今回は特定できなかったようだ。参加者の規模がまだまだ足りず、今後はさらに参加者層を拡大して調査を続けていく予定だという。

研究とは直接関連のないオックスフォード大学のジル・マクヴィーン教授がBBCに語ったところによれば、人間の数値化できる能力すべてには遺伝子型の要素が含まれている。

共感能力をはじめ、速く走る能力、きれいな歌声、記憶力、ナルシシズム…好ましいものも、そうでないものも、いずれすべての人間の特徴や能力が特定の遺伝子型にあてはめられたとしたら、遺伝子を操作して「完璧な」人間を作り出すことだって理論上には可能になる。その方向性に、少なからず懸念を感じてしまう。

今回の研究に参加した4万6千人はすべてアメリカの遺伝子検査スタートアップ、23andMeの顧客だったという。もちろん合意の上で研究データを提供しているのだが、今後もし遺伝子情報を解析しただけでその人となりがすべてわかってしまうような世の中になったら、そう簡単に他者に遺伝子情報が知れ渡ってしまうのは避けた方がよさそうだ。

Genes have a role in empathy, study says (BBC)

Genome-wide analyses of self-reported empathy: correlations with autism, schizophrenia, and anorexia nervosa (Translational Psychiatry)

23andMe gets FDA green light for cancer risk test (Tech Crunch)

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