NASA双子研究、宇宙滞在経験者側に遺伝子発現の変化

双子研究とは

双子の宇宙飛行士の一人が宇宙に一年滞在、もう一人が地上に残り、その違いを調べるというNASAの「双子研究」(The Twins Study)。それにより宇宙に滞在した方には遺伝子発現に変化が起きていたことが判明した。

現役宇宙飛行士のスコット・ケリー(写真右)と、現役を引退した元宇宙飛行士マーク・ケリー(写真左)。スコットが2015年10月から1年間ISSに滞在し、比較対象となるマークは地球に残る、というこのふたりによる双子研究については昨年も、「宇宙での遺伝子発現はまるで爆発を見ているかのよう」でお伝えしていたが、今回はその研究の次の段階の結果が発表されたもの。 

だがそもそも、この双子研究というものはどんなものだろう?

NASAの双子研究は、一卵性双生児の一方を宇宙に滞在させ、もう一方が比較対象として地上に残ることで、宇宙滞在の影響を調べるというもの。これまでわからなかったような宇宙滞在によっておこる微細な変化も、双子を比較することによって見つけることができるのだ。複数の国の企業や大学、国の研究所からなる10の個別の調査が行われ、体全体の機能の調査から脳機能、分子レベルの調査まで、幅広い分野で調べてこれを総合的に研究する。

研究は3つの段階に分けられており、最初の段階は研究チームたちがスコットの宇宙の滞在中に起こった物理的、心理的な変化などについて調査し、マークとの比較を行い、その結果を発表するというもので、2017年に行われた。第2段階はその内容を補強すると共に、スコットが地球に戻ってからの変化をマークと比較するというもので、今回の続報はこの段階のものだ。最後の第3段階は2018年後半で、これまでのものをまとめた研究が発表される。

研究から判明したことは、今後宇宙飛行士個人個人の安全やパフォーマンスの最適化に向けた対策へと活用されることとなる。

宇宙滞在で起きた変化

 さて、NASAが今年2月に発表した第2段階の双子研究で判明したのは、スコットの宇宙滞在から帰還後でみられた変化だ。スコットが宇宙に滞在していたことで彼の身に起きた生物学的な変化は、そのほとんどが地球に戻り数時間から数日間のうちに宇宙に旅立つ前と変わらない状態まで戻った。一部の変化は6か月後まで続いたという。

その一方遺伝子関連では面白いことが起きていた。染色体の末端についていて、年を取ると共に短くなる「テロメア」という構造は、スコットが宇宙にいる間に著しく伸びていた。しかしこのテロメアのほとんどはスコットが地球に戻って48時間のうちに短くなり、その後は地球を発つ前の状態で安定した。この原因は未だに調査中ではあるものの、ISSでの厳格なカロリー摂取制限と厳しいエクササイズ計画によるものである可能性も考えられる。 全ゲノムシーケンスにより、両者ともゲノムに数百の独自の突然変異が起きていることも判明した。そのうちいくらかは宇宙滞在後にしか見られず、血中をセルフリーDNAとして流れているものだった。これは宇宙旅行のストレスにり細胞の生物学的経路が変化し、DNAとRNAの放出が受けたものとも考えられる。

宇宙でのゲノムの変異

これは脂肪やタンパク質などの分子を新たに集合させたり、細胞の分解などを引き起こす可能性があるものであり、遺伝子のオン・オフを切り替えて細胞の機能を変更させることができるものだ。

スコットの遺伝子発現の93%は地球に戻ってすぐに通常状態に戻ったのだが、残りの7%には、より長期的な変化が起きているようであった。NASAが「宇宙遺伝子」と呼ぶこの7%に含まれるのは、免疫システム、DNA修復、骨形成ネットワーク、低酸素症や高炭酸ガス血症に関連するものだった。

一卵性双生児でふたりともが宇宙飛行士になったのはこのケリー兄弟が史上初。なので今回のような双子研究が行われるのも史上初。このように限りなく似た身体構造を持った二人を比較する機会が次に訪れるのはいつになるかはわからないし、今回の結果も何とも気になる内容だが、将来この結果から導き出された仮説が検証され、未来の宇宙飛行士たちの役に立つことになるのだろう。

宇宙滞在で遺伝子が変化、一卵性双生児と一致せず NASA(CNN)

NASA Twins Study Confirms Preliminary Findings(NASA)

NASA Twins Study Investigators to Release Integrated Paper in 2018(NASA)Human Research Program(NASA)