大砲から人が放たれ、宙を舞う。サーカスなどでおなじみの人間大砲。現地時間の3月14日には、ビデオゲームのプロモーションのために行われた人間大砲で、飛行距離のギネス記録を更新するという出来事があった。非常に危険でありながら人の心を掴んで離さない人間大砲。その歴史を紐解いてみよう。
人間大砲の歴史
人間大砲の歴史は古く、1800年代にまでさかのぼることができる。How Stuff Worksによれば、ジョージ・ファリニ(George Farini)というイギリス人が1871年に人間大砲の元となる「発射機」の特許を取得したのがその原型だ。これはバネにより人を宙に打ち出す単純な仕組みのものであった。イギリス中のパフォーマンスで使用されることとなったこの発射装置はその2年後にはアメリカへも渡った。
1880年には実際の大砲の中にバネが付いた発射機が使われた。これは人が飛び出すと同時に、実際に大砲を撃っているかのような火花が飛び出るというものだった。「大砲の見た目で、人の発射とともに炎が出る」というスタイルはどうやらこの時に完成されたようだ。
しかし現在の人間大砲では、発射の際の仕組みは少々違うものが用いられている。バネの代わりに、圧縮空気やバンジーケーブルにより人を打ち出すのだ。このように大砲から人を発射させるのには昔から今まで火薬は使われていない。
人間大砲の危険性
飛び出す速度は時速100㎞以上になるものもあり、もちろん下手をすれば骨折はおろか、死んでしまうことだってある。How Stuff Worksによればこれまでに30人の人間大砲パフォーマーが亡くなっているという。最近では2011年に人間大砲パフォーマーのマシュー・クランチ(Matthew Cranch)がイギリスで行われたスタントショーで、着地ネットの準備不良のために死亡している。
人間大砲の世界記録
現在のところ人間大砲で複数の世界記録を持つのは「弾丸」(The Bullet)の愛称で知られるアメリカ人のデイヴィッド・スミス・ジュニア(David Smith Jr.)だ。
スミス・ジュニアは父親も「キャノンボール」として知られたデイヴィッド・スミス・シニア(David Smith Sr.)というプロの人間大砲パフォーマーであり、スミス・シニアの妻も一時は人間大砲パフォーマーをやっていたという人間大砲一家出身だ。そんなスミス・ジュニアは、2011年にイタリアのテレビ番組で飛距離59.05mを記録し、人間大砲で飛んだ距離のギネス世界記録に名を残しているほか(上の動画はそのときのもの)、2013年には人間大砲で飛んだ高さのギネス世界記録として26mを記録している。
人間大砲パフォーマーとしては5,000回以上飛んでいるプロの人間弾丸である彼は、今年の3月14日にビデオゲーム『Sea of Thieves』のプロモーションのために人間大砲として約10mの長さの大砲から飛び出し、59.33mを飛んだ。自らの飛距離記録を塗り替えたのである。
こうして現在も記録を塗り替えながら19世紀から続く人間大砲、もしかしたら今後もより高く、遠く、そしてより安全に人間を飛ばす方法が見つかり人間大砲の伝統は続いていくのかもしれない。
『Sea of Thieves』Xboxイベントにて催された“人間砲弾”がギネス記録を達成!(Game Spark)
Sea of Thieves shoots real guy out of cannon, breaks world record for doing that(PC Gamer)
How a Human Cannonball Works(How Stuff Works)
Human cannonball Matt Cranch death ‘accidental’(BBC)
Human Cannonball – ZACCHINI the modern Münchhausen(YouTube – Weird Reels)
Sea of Thieves Human Cannonball Launch | GUINNESS WORLD RECORD(YouTube – Xbox)Human Cannonball, Farthest Distance – GWR Video of the Week 31st August 2011(YouTube – Guinness World Records)