Credit : ESA/Sitael

ESA、世界で初めて空気を燃料とするイオンエンジンの点火に成功

3月5日、欧州宇宙機関(ESA)を中心とする研究チームは、世界で初めて、空気を燃料とし駆動するイオンエンジンの点火に成功したと発表した。これにより、超低軌道を回る人工衛星の長期間使える推進力としての採用が期待されている。

現在、ESAの人工衛星GOCEは、高度およそ250kmの軌道を5年以上周回しており、これは搭載されているイオンエンジンにより実現している。しかしその寿命は限られており、搭載された40kgのキセノンを使い果たしてしまえば、それ以上は稼働することができず、人工衛星としての任務もそこで終了となってしまう。

このイオンエンジンを、この度発表されたような、空気分子を燃料とするものに置き換えることができれば、その寿命は大きく伸びることになるだろう。また、地球の超低軌道だけでなく、例えば火星と言った他の惑星の大気中にある二酸化炭素を燃料にすることも可能なことから、その活動範囲は大きく広がることが予想されている。

まるで人間が息をするように、空気分子を吸い込んで動くイオンエンジン。開発したのはイタリアのSitael社で、高度200kmをシミュレートする真空の試験室内で点火実験が行われた。もっとも難しかったことは、空気分子を効率よく集め圧縮する吸い込み口の設計であったということだが、全体の構造自体はとてもシンプルとのこと。その吸い込み口の設計を行ったのは、ポーランドのQuinteScience社。取り込まれた分子には電荷がかけられ、これにより加速、推進力となる。

キセノンを燃料とする場合、噴射口からは青い光が発せられるが、空気を燃料とする場合紫色の光が発生するという。ESAによると、今まで空気を燃料とするイオンエンジンは仮説の域を出なかったものの、今回の実験成功により本格的な開発が進み、将来の宇宙ミッションにおける基盤技術となるだろうとしている。

大気中にある分子を利用し、推進力に変えるというこの技術。イオンエンジンは真空中でしか作動できないため、その応用範囲は限られるが、宇宙空間において今後ますますその利用価値が認められ、宇宙空間における様々な活動に広く利用されていくことだろう。

World-first Firing of Air-breathing Electric Thruster (ESA)

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