Credit : The University of Plymouth

農家の「右腕」になるか、イギリスの最新農業用ロボット

イギリスでは、人の形を模すことで、これまで人でなければできなかった繊細な作業が可能な農業用ロボットが開発中だ。ブレグジットを目前に控えたイギリスの農家にとってこれは大きな助けになるかもしれない。 

英カリフラワー農家の悩み

窒素肥料メーカーYARAによれば、イギリスでのカリフラワーとブロッコリーの生産量は、世界的に見れば11位。EU圏内に限ればイギリスの生産量はではトップ5に入る。しかし、現在用いられている農業用ロボットで代表的な、無人で農機が動き、畑を耕し、種をまき、収穫したりするといったいわゆる「ロボット農機」では、繊細なカリフラワーの収穫はできない。

カリフラワーの収穫には、収穫するカリフラワーを見定めて、傷がつかないよう数枚の葉と共に茎から採るという高度な作業が必要なのだ。ロボットはもとより、人間にもそう簡単な作業ではない。英テレグラフの取材に応えている農家によると、カリフラワーやキャベツなどが属するアブラナ属の生産コストの中で収穫に占めるコストの割合はなんと40%に登る。その上、その技能を持った人材は年々見つけにくくなってきている。だが消費者は野菜に低価格を求める一方、収穫に掛かるコストは増していく…。

そんな中でイギリスの農家には、2019年3月にはブレグジット(欧州連合からの脱退)も更なる不安要因となっている。これにより、人材を探すことがより難しくなるほか、欧州連合の共通農業政策からイギリスの農家に支払われていた補助金などが脱退の移行期以降どうなるかも不透明で、農家にとって将来の不透明さは悩みの種のようだ。 

ロボットは英農家の「右腕」となるか

技術の進歩につれて価格が安くなってくる農業用ロボットなら、先行きの見えないイギリスの農家のコスト削減の助けとなるかもしれない。だが、従来の農業用ロボットでは、カリフラワー農家の収穫の助けにはならない。そんな中でイギリスのプリマス大学が研究しているのが、人の形を模した、カリフラワー収穫ロボットだ。

人の形を模した、と言っても、カリフラワーの収穫に人間の形そのままのロボットは必要ではない。これに使われているのは筒から人の「右腕」が生えたような形のロボット「グミ・アーム」(GummiArm)だ。実はこのグミ・アームはカリフラワー収穫のために作られたロボットではなく、元々はプリマス大学の作ったオープンソースなロボットアームプラットフォーム。ただの機械的なロボットアーム以上のものを目指し、人の腕のような腕は柔軟性と頑丈さを兼ね備え、その両方を状況により使い分けることができるもの。これがカリフラワー収穫に役立つのだ。カリフラワー収穫用のグミ・アームには、カメラやセンサーも備わっており、カリフラワーが収穫に適しているか確認し、適したものだけを収穫することができるようになっている。現在このロボットを使ったカリフラワー収穫のためのプロジェクトはコーンウォール地方で行われているところだ。

Credit: The University of Plymouth

カリフラワーだけじゃない

このグミ・アームは今後2,3年すれば利用できるようになると見られている。もちろんカリフラワーだけでなく、他のアブラナ属の野菜にも、それ以外の様々な野菜の収穫に用いられるよう変更を加えることもできるほか、将来的にはこのロボットを収穫時期だけではなく、雑草除去や殺虫剤散布などにも活用することが考えられている。

これまで人による細かな手作業が必要だった農業分野でも、農業用ロボットが助けることのできる時代の到来は、人手不足と高い人件費に悩む農家のみならず、生産コスト削減の面では消費者にとっても嬉しいことに繋がるだろう。ロボットが人間の収穫者を置き換えることは、それ以外にも作物のデータ入手の面でも役立つとされる。グミ・アームの場合、作業を通じ収集した画像や、ロボットの手からの触感データからリアルタイムで情報を取得できるという利点もあるのだ。特にデータ収集の点では、これまで得られなかったデータを長期的に収集することで作物栽培の改善につなげることも考えられている。

また、グミ・アームを考案したマーティン・シュトーレン(Martin Stoelen)博士は、このような「クールな」技術により、若者が農業キャリアを選ぶ可能性も増えるかもしれない、とテレグラフに語っている。

なお、このGummiArmはアクチュエーターなど自前で用意しないといけない部品ももちろんあるものの、3Dプリント可能なデータがGitHubで公開されているので、興味のある方は作ってみるのもいいかもしれない。

Meet the robot lending a cyber-hand to Cornwall’s cauliflower harvest(The Telegraph)

農業自動化・ロボット化の現状と展望(JATAFF)

The Guardian view on farming after Brexit: not quite a revolution(The Guardian)

Brexit: UK agriculture policy(Parliament.UK)

Vegetable Brassica World Production(YARA)

GummiArm(GitHub)

The GummiArm project(YouTube)

Scientists develop harvesting robots that could revolutionise farming practices(Plymouth)

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