謎多き泥の中の小さな小さな動物、泥ドラゴン

英語で「泥ドラゴン」(Mud Dragon)の異名を持つ生物をご存じだろうか?これは日本語では動吻動物と呼ばれ、学名は「Kinorhyncha」。節のある体をしており、そのほとんどが体長1mm以下のとても小さな無脊椎動物だ。 

浅瀬から海底まで、ドラゴンの生き様

この泥ドラゴンはその名の通り泥の中や砂の中、藻や無脊椎動物の表面や体の隙間などにも住んでおり、深海8,000mに住むものもいる。1841年にフランスで初めて発見され、以来北はグリーンランドから、南は南極まで世界中で約230種発見されており、日本でも北海道から沖縄まで16種類が見つかっている。

体は頭、首、そして11の節に分かれており、頭は亀のように体に引き込むことが可能だ。泥ドラゴンは水の中を泳ぐことはできないが、頭と体の後ろにはトゲが生えており、頭を出し入れする動作によりトゲを周囲に引っかけて移動する。なにを食べて生活しているかはよくわかっていないものの、底生性の珪藻やバクテリア、単細胞藻類などの有機物を食べる沈積物食動物だと考えられている。

泥ドラゴンには雄と雌がおり、一度に卵を3から6個産む。卵から生まれる幼生は、大人と比べ2節少ないものの、形としては大人と同じまま生まれてきて、節の数は大人になるまでの6回の脱皮を通じて増える。しかし交尾の様子が観察されたのはこれまでにたった1種のみだ。

なかなか見つからなかったドラゴンの先祖

形態学的な系統で泥ドラゴンと同じ進化系統からなるとされる、エラヒキムシの仲間(鰓曳動物)やコウラムシの仲間(胴甲動物)の化石はカンブリア紀からのものが多く見つかっているのに、泥ドラゴンは1841年の発見以来、最近までひとつも見つかっていなかった。しかし2015年には初めてカンブリア紀初期、約5億4,000年前の泥ドラゴンによく似た生物の化石が中国で発見され、その進化の謎にもようやく解明のための手がかりがでてきたところだ。 

ドラゴンの捕まえ方

この記事を読んで自分も泥ドラゴンを調べてみたいと思い立った方は、泥ドラゴン研究の大家であるロバート・ヒギンス(Robert Higgins)が偶然見つけ出した「バブル・アンド・ブロット」という方法を使って泥ドラゴンを集めてみると良いかもしれない。この方法は、ふたつのバケツを使い、潮間帯などで採取した泥水を片方のバケツからもう片方へと流し込む。これを繰り返すと泥水の上の方に泡の層ができる。そうすると泥ドラゴンはこの泡の中に捕らわれるので、紙を表面の泡の層に浸す。これにより泥ドラゴンが紙につくので、これを水で「マーメイド・ブラ」と呼ばれるコーン状のきめ細かい網に流し入れて採取するのだ。

1mm以下の生物なので顕微鏡がないと観察は難しいかもしれないが、前述のように食生活も明確ではないし、寿命もわからないなど、泥ドラゴンに関しては未だわからないことも多い。もしかしたら次世代の泥ドラゴンの大家になるのはあなたかもしれない。

King of The Mud Dragons(Smithsonian)

Diversity of Kinorhyncha in Japan and Phylogenetic Relationships of the Phylum(SpringerLink)

First report of kinorhynchs from Hokkaido, Japan, including a new species of Pycnophyes (Pycnophyidae: Homalorhagida)(ResearchGate)

大浦湾に動吻動物の新種 琉大・山崎研究員が命名(琉球新報)

Armored kinorhynch-like scalidophoran animals from the early Cambrian.(PubMed)

Researchers discover fossil samples of ancient, microscopic worms dating back 530 million years(PhysOrg)

Kinorhyncha(ADW)

Interstitialanimal – History of Kinorhyncha(YouTube)

Animal Earth – A kinorhynch (mud-dragon) (YouTube)

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